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父の一周忌法要で横浜に帰った。羽田空港に降り立ち熱風のようなムッとした空気に触れた瞬間、一年前の自分が蘇って来る。危篤を知らされ駆けつけた時にはすでに自宅の和室で白い布を被せられ横たわっていた父。言葉を交わすことは出来なかったが、その表情が穏やかで安堵した。告別式当日はカンカン照りで喪服の黒が腹立たしいほど太陽を吸収して背中から汗が流れた。そんな一年前を思い返しながら地元の駅に到着。墓がある寺まで故郷の町を歩く。父は料理が好きで帰省する度、私と娘に腕を揮ってくれた。父行きつけのスーパーマーケットの前で足が止まる。客で賑わう店内にその姿はないとわかっていても探してしまう。墓は緑豊かな寺の一角にあり、冬晴れの日には遠く富士山も望める。しかしなぜだろう18年前に他界した母と昨年亡くなった父、揃って眠っているはずの墓石の前に立っても、ピンと来ない。ここにはいないような気がするのだ。それでも手を合わせるとスッキリとした心持ちにはなった。これまで帰省すると2.3日泊まって娘とじぃじのやりとりを見て笑ったものだが、それはもう叶わない。法要を済ませるとトンボ返りで羽田空港へ向かった。新千歳へフライトする機内で眠るでもなくぼんやりとしていると、ふと左頬に暖かさを感じた。思わず目をやると美しい夕日だった。その時、なぜかとても近くに両親を感じた。数時間前の墓参りでは全く感じなかった父と母の気配というか温もりというか、なんとも表現しがたい感覚に体が包まれ、やがて悲しみが和らぎ自分の口元が笑っているのがわかった。夕闇に変わるまで両親と私の心の中での会話は続き、とっぷり日の暮れた北海道の大地を踏みしめた時、私はすっかり元気を取り戻していた。
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