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詰めが甘い  北本 隆雄

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好きなアーティストは?と聞かれると「DREAMS COME TRUE」とすぐに答えます。中学校の掃除の時間に「何度でも」という曲を熱唱しながらトイレの床をピカピカに磨いていた記憶があるので、もう10年近くドリカムが好きです。

大学生の時ドリカムのライブへはじめて「ひとり」で行くことになりました。ライブ当日になり、なぜか急に、ひとりでライブへ行くことへの寂しさや恥ずかしさが私を襲ってきました。夕方のオレンジ色の陽が差し込む部屋でチケットを手放すことすら考えていました。そんな時、就職活動のために買ったばかりのスーツが目に飛び込んできて、こんなことを思いつきました。

『そうだ、音楽会社のサラリーマンになりきろう』

仕事としてドリカムのライブがどのようなものか調査している設定にしよう。そうすればひとりでもライブに行ける…。今思えば意味不明ですが、当時の私にとっては“名案”に思えました。

まず、普段はしないワックスを髪にたっぷりとつけ、Yシャツにアイロンをあてました。一応“仕事”のためのノートやペンを黒いかばんに入れ、おろしたてのスーツをまとい家を出ました。道行く人が私のことを見てきます。「おっ!できるサラリーマンって見られているのかな。」なんて思いました。作戦は完璧なはずでした。

 …スーツには黒色か茶色の、革靴が一般的です。ようやくライブ会場が近づいてきたとき、自分の足元からビンビンと放たれる異様なオーラに気づきました。

「靴が、違う。」

 私が履いていたのは青色のランニングシューズでした。しかも南国の海を泳ぐ熱帯魚のように鮮やかな色の靴でした。何が“できるサラリーマン”でしょうか。道ゆく人はただ「あの人の靴、変だなー」と思っていたのか。顔から火が吹き出しそうでした。

その後のライブで、すべてを受け入れてくれるドリカムの優しい歌が、変なスーツ姿の私の心を癒してくれたのは言うまでもありません。

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