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番台のおじさん、ごめんなさい。  北本 隆雄

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寒くなり「銭湯に行きたいな~」と考えながら、
小学生の低学年だったころを思い出していました。

友達と銭湯に行った時、ぶくぶくと泡が出る浅い湯船に浸かりながら、
ロッカーの鍵を沈めてどちらが早く見つけられるか競う
“宝さがしゲーム”を思いつきました。

「じゃ、僕の鍵を沈めるね!!!!」

湯船に“ちゃぽん”と落とし意気揚々と探し始めて数分。
なんと、見つからないのです。

“宝探しゲーム”なんて言っている場合ではなくなり、
血眼になって探しました。

すると湯船の中に、広げた手のひらがすっぽりと入るくらいの黒い穴を見つけました。
ゆっくりとゆっくりと、でも確実にそこに向かって水の流れができています。

おそらく排水のためにあるその穴には物が入らないためのネットなど何もなく、
ぽっかりとただ口を開け、静かに獲物を待っているようでした。
私の鍵はその餌食になったのです。

この穴を見つけたときのショックは、
小学生の私にとって計り知れないものでした。

番台のおじさんに精一杯謝ると「いいよ、いいよ」と言いながら
マスターキーでロッカーを開けてくれましたが、

「…あの穴に吸い込まれた物はしばらく戻ってこないの。」

と静かに言われました。

「このおじさんでさえ、あそこに入った物をすぐ取り出せない…」

すっかり心が弱った私は、鍵をなくした申し訳なさとともに
次は自分がその不気味な穴に飲み込まれそうで怖くなり
しばらくその泡ぶろに入れませんでした。

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