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一瞬の希望

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宮永 真幸 プロフィールへ
熱戦が続く平昌オリンピック。1998年の長野以来、20年ぶりのオリンピック現地取材から帰ってきた。その長野を上回る勢いの日本のメダルラッシュ。
冬のオリンピックでのどさんこ選手の活躍は、北海道に暮らすものとして本当に誇らしい。
女子ジャンプ初のメダルを獲得した髙梨沙羅はメダリスト会見で、家族のように見守ってくれる故郷上川への想いを語った。授与式で誇らしげにメダルを掲げる髙木美帆と髙梨沙羅の姿、平昌の夜空に翻る日の丸。
オリンピックは競技者も観客も自分のアイデンティティを再認識する場でもある。
そして、お互いのそれを認め合い、敬いあう平和の祭典だ。
しかし、この尊い場を政治利用しているとの批判があったのが女子アイスホッケー韓国と北朝鮮の合同チーム・コリアだ。もちろん選手たちが決めたことではない、明らかな意図のもとに政治力によってつくられたチーム。様々な思惑が渦巻く中で行われた日本戦を取材した。

悲鳴にも近い歓声に包まれるリンク。9割がコリアの応援。北朝鮮の女性応援団もスタンドに陣取り、韓国の人たちと声を合わせて応援をする。日本の応援はその一角にしかなく圧倒的なアウェー。ニッポンコールが起こると、それをかき消すようにコリアコールが会場一体に広がる。それでも選手たちは懸命にプレイした。日本もコリアも。自分たちがこのオリンピックのためにやってきたことを目いっぱいに表現していた。
統一旗をふりながら「わたしたちはひとつだ」と叫ぶ観客たち。日本人の私からすると異様な雰囲気に感じられたが、多くの人たちの表情は本当に嬉しそうだった。合同チームのゴールが決まると、このときだけは北朝鮮応援団にもつくられたものではない笑顔がこぼれた。そして日本への敵対心をあらわすような応援はまったくなかった。韓国の人たちは、むしろ私たちに友好的に接してくれた。
試合の合間、印象的なシーンがあった。スタンドで始まったウェーブ。韓国人の波がスタンドを走り、日本人の応援団へと届く。すると日の丸の旗が大きく揺れて波が再び韓国人へとつながる。その先に待っているのが北朝鮮の女性応援団。自然発生的な応援は許されているのかとみていると、彼女たちは流れるような波を描き韓国人へとつないだ。

政治的な思惑は確かにあった。しかし少なくとも試合中の会場の中は純粋に自分のアイデンティティを選手に投影しながら応援していたのではないだろうか。それは日本も韓国も北朝鮮も同じだったように思う。
儚いけれどもスポーツがもつ希望を感じた一瞬だった。