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あの日を振り返る  高山 幸代

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 今年の漢字が「戦」に決まった。これまでこんなに心が重く、胸が痛んだことはないというほど、望まない漢字。そんな世の中にだけはならないようにと、世界中の人が祈り続けていたはずなのに。
 そんな今の世界情勢を感じることが、我が家の最も身近で起こったのが、10月4日。あのJアラートが出された朝だ。いつも通りにそれぞれの身支度を慌ただしくしていた家族。突如けたたましく鳴り響くスマホ。テレビから繰り返される「ミサイル発射」のアナウンスと大きな文字。隣国からのミサイルはこれまで幾度もあったが、今回は何が違うというのか…? 我々親が戸惑う中、小5の娘が泣き出した。「ミサイル落ちるの?」「ここに飛んでくるの?」。娘は「学校に行くの、怖い」と泣きじゃくり、取り乱し方は驚くほどだったが、後で冷静に考えてみると、「また遠い海に落ちて、何事もないだろう」と心のどこかで思っている大人の方がおかしいのかもしれない。その場はとにかく、「ここには落ちないよ、大丈夫だよ」と、全く根拠のない言葉で娘をなだめるしかなかった。

 それからしばらく経った10月下旬、教育委員会から「弾道ミサイル発射に係るJアラート発信時の対応」という書面が出された。登校前の場合は、安全が確認される情報が得られるまで原則自宅待機、その後の登校再開は各家庭による判断…などというもの。読みながら、何という時代になってしまったのだろう…、と気が遠くなる思いがした。私が子供の頃、こんなことは一度もなかった。後で聞いたところ、あの日取り乱したのは我が子だけではなく、泣きながら登校する子、授業が始まってもまだ怯えている子がいたそうだ。そして、世界にはもっと目の前に、現実のものとして恐怖が迫っている人々がたくさんいることを今さらながら思い知り、いくら想像しても及ばないその状況に、心を重ねようと思いを巡らせた。

 今年の締めくくりに明るい話題じゃないのは心苦しく、自分でもあまり気持ちの良いものではないが、「戦」が一年を表す漢字になるような世の中が終わって、そして二度と選ばれることのないようにという強い願いで綴らせてもらった。ミサイルがしょっちゅう飛んでくるようなこの現状には、決して慣れたくないし、慣れてはいけない。言うまでもなく、ミサイルの問題だけではない。かの国の権力者の独りよがりな未来図を、どうすれば変えられるのか。戦車はどうすれば止められるのか。世界中の多くの人々が、1年でいちばん幸せでやさしい気持ちになるこの季節にこそ、真剣に考えなければ。1人では何も変えられないが、1人1人が願わなければ、何も変わらないのだから。

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