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父娘の思い出  高山 幸代

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 最近、我が家でブームになっている夕食後の遊びがある。「神経衰弱しよう!」と5歳の娘が唐突に言い出したのは、1週間程前のこと。ちょっと前までかるた取りに熱中していたのだが、知らぬ間に子どもは成長しているもので、保育園ではトランプで遊び始めたらしい。幼い子の口から飛び出した「神経衰弱」というとても不釣り合いな言葉に笑ってしまったが、次の瞬間私の目はキラリと輝いた(と思う)。なぜなら、子供の頃の私にとって、それはこれ以上ないほどの得意分野。1度めくられたトランプは私の脳裏に完全に記憶され、時間の経過とともに、まるで数字が透けて見えるかのように、おもしろいほど取れて行く…。ゲーム後半は私の独壇場だった。対戦相手はもっぱら父。かなりの強敵で、鍛えてもらった。時代が違うので、今のイクメンパパのような子煩悩ではなかったが、たまに遊ぶ時には必死に盛り上げてくれていたのだと思う。取れても取れなくても、常に大げさなリアクション。それに釣られるように、私も喜びも悔しさも爆発させ、大騒ぎしながら楽しんだのが思い出となっている。
 話を現在に戻そう。早速、しまいこんでいたトランプを探し出し、床の上に並べ、家族3人で囲んだ。この感じ、何十年振りだろう…。まず一巡目、なんとか3人がめくった数字を記憶した。しかし二巡目、早くも何かが違う。自分がめくった数字は覚えた。が、他の数字がもう入って行かない。無理に入れようとすると、その前に覚えたものがわからなくなって…。
 あまりのショックに、早々に戦線を離脱。その後は家事を理由に参加を拒み、夫と娘が日々真剣勝負を繰り広げている。父と私よりはやや静かな対戦であるが、娘は日に日に強くなっているようで、夫が段々大人げなく必死になりつつあるのが可笑しい。かつての父と私の姿を、あの頃の母の視点で見つめているような、不思議な気持ちになる。亡き父が孫と対戦できたとしたら、どんな盛り上げ方をしたのだろうか…。見てみたい気がした。

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