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キスリング展 エコール・ド・パリの巨匠

見どころ


狂乱のパリを駆け抜けた色彩画家 —コロリスト—
謎めいた輝きを放つ、官能的な写実主義(レアリスム)
日本初上陸作品を含むキスリングの傑作が一堂に会す本格的な回顧展
 
 第一次世界大戦が終結し、多彩な文化が咲き誇る「狂乱の時代(レザネ・フォル)」の幕が開けたパリで一人の画家が一世を風靡します。画家の名はキスリング(Kisling 1891-1953)、キュビスムやフォーヴィスムといった特定の芸術運動には組みせず、自由な表現を追求したエコ-ル・ド・パリを代表する画家です。同時代に活躍したピカソ、パスキン、藤田嗣治や親友モディリアーニらの影響を受けながら、自身の表現を模索する中でどこか哀愁の漂う作風を確立します。その丁寧な筆致による洗練された写実主義と華麗で透明感のある色彩を駆使したミステリアスな造形世界は、多くの美術愛好家を魅了しました。
 その社交的な性格から画家仲間からだけでなく、多くの著名人からも愛されたキスリングでしたが、忍びよる戦争の影が彼を襲います。出自がユダヤ系であったこともあり、ナチスから迫害を受け、愛する家族をフランスに残し、アメリカに亡命します。若くして才能を認められた一方、その人生は時代の闇に翻弄される劇的なものでもあったのです。
 本展では、パリに出て間もない初期作から、アメリカ滞在時代を通して晩年にいたる円熟期の作品までご紹介します。二つの世界大戦を挟んだ激動の時代を生き抜いたキスリングの画業を国内作品に限らず、フランスやスイス、アメリカ、シンガポールなど海外の美術館や個人蔵の名作も含めて振り返ります。

エコール・ド・パリとは

キスリング
©Laure Albin Guillot / Roger-Viollet
フランス語で「パリ派」の意味。20世紀初めにパリで活動した画家たちを指し、その多くは外国出身者でした。キスリング、モディリアーニ、シャガール、スーティン、パスキン、藤田嗣治などが代表格であり、同時代の前衛芸術の影響を受けながらも、共通の思潮は持ち合わせず、各自の様式を展開します。それは芸術の都パリに生まれた、国際的できわめて個性的な集団だったと言えるでしょう。中でも、キスリングは陽気で社交的な性格も相まって、その中心的な存在となり、「モンパルナスのプリンス」と呼ばれ時代の寵児となりました。

キスリングと静物画

駆け出しの頃から、静物画を多く描いたキスリング。
なかでも、花は彼の最も得意とした主題の一つでした。細部を丁寧に描き分ける技術はもちろんのこと、それぞれの花の色合いの差、差し込む光による陰影を描き込むことで画中の花の存在感を強調しています。
  • 《花》
    《花》1933年 サトエ記念21世紀美術館
  • 《青い花瓶のある静物》
    《青い花瓶のある静物》1914年 プティ・パレ美術館/近代美術財団、ジュネーヴ Petit Palais / Art Modern Foundation, Genève
  • 《ミモザの花束》
    《ミモザの花束》1946年 パリ市立近代美術館 Photographie ©Musée d'Art Moderne / Roger Viollet

キスリングの肖像画

陶器のような艶っぽい肌、アーモンド型の眼、中空をみつめるまなざし。
これらはキスリングの肖像画の特徴です。そのモデルは名前も年齢もわからない少年少女から銀幕の大女優までさまざまですが、それぞれの個性よりも漂うメランコリックな気配のほうが、いっそう強く感じられます。
  • 《肖像画》
    《肖像画》1946年 個人蔵 Courtesy Edouard Malingue Gallery
  • 《緑色のスカートの女性》
    《緑色のスカートの女性》1928年 村内美術館
  • 《モンパルナスのキキ》
    《モンパルナスのキキ》1925年 みぞえ画廊

キスリングと風景画

生涯で400点近く描いた風景画。初期作品にはセザンヌ風の暗い色調が見られましたが、1918年に南仏と出会った頃から、田園の風景であれ、港の風景であれ、画面に明るさが増します。そこには「驚くべき色彩の操り手」と謳われたキスリングの温かな色彩表現が広がっています。
  • 《サン=トロペ風景》1917年 プティ・パレ美術館/近代美術財団、ジュネーヴ Petit Palais/Art Modern Foundation, Genève
    《サン=トロペ風景》1917年 プティ・パレ美術館/近代美術財団、ジュネーヴ Petit Palais/Art Modern Foundation, Genève
  • 《マルセイユ》1940年 プティ・パレ美術館/近代美術財団、ジュネーヴ Petit Palais/Art Modern Foundation, Genève
    《マルセイユ》1940年 プティ・パレ美術館/近代美術財団、ジュネーヴ Petit Palais/Art Modern Foundation, Genève
  • 《マルセイユの港》1940年頃 パリ市立近代美術館 Musée d’art moderne de la Ville de Paris
    《マルセイユの港》1940年頃 パリ市立近代美術館 Photographie ©Musée d’Art Moderne/Roger Viollet