どさんこワイド179

どさんこレコーダー〜厚真町に一軒だけの理容室

2018年10月26日(金)

どさんこレコーダー〜厚真町に一軒だけの理容室

北海道のある場所を定点観察する企画「どさんこレコーダー」。今回は、厚真町で唯一の理容室に密着しました。
9月6日に発生した北海道胆振東部地震。震源地となった厚真町は道内史上最大となる震度7を記録しました。町内では土砂崩れで36人が犠牲となりました。あれから間もなく2カ月。被災地の方々は今、何を思うのでしょうか。

理容室 ぼん

【住所】厚真町錦町27-1
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朝の気温はすでに氷点下となる厚真町。冬の足音が少しずつ近づいています。町にたった1軒の理容室「ぼん」を訪ねました。午前9時開店。44年続くお店は現在、店主・宮副頼明さんと息子の拓哉さんが切り盛りしています。
開店直後、1人目のお客さんがやってきました。厚真町出身で現在は苫小牧にお住まいの30代の男性です。理容室には小学生の頃から通ってて、髪を切るのは「昔なじみのこの店」と決めています。

お店は震災から4日後に営業を再開しました。断水のため、髪を洗うことはできませんでしたが、散髪や髭剃りをし、思い出話でお客さんを元気づけました。
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続いてやってきたのは若い男性。お隣・安平町で働く消防士さんです。震災直後は余震も続く中、土砂崩れの現場で救出活動にあたりました。土砂が道を塞ぎ、重機が肝心なところには入れず、安否不明者が見つかるまで人の手で堀り続けたそうです。

午後3時、この日3人目のお客さんは、町内で飲食店を営むオーナーです。この理容店に通い始めて40年。高校生の時にここでパーマをかけた思い出を話してくれました。
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密着2日目。午前10時頃、赤い乗用車がやってきました。店主の妻・恵美子さんの同級生の山野下さんです。木工が趣味で、理容店に飾ってもらうために作品を持ってきました。
今回の地震で吉野地区にある奥様の実家は全壊。畑作業をする時に家族や親せきで集まる場所として使用していましたが、幸いその時は誰もいなかったためご家族は無事でした。山野下さんはほぼ毎日その現場に足を運んでいます。
家屋は土砂に飲み込まれ、影も形もありません。つい最近、土砂の中から家具や日用品を取り出す作業が始まったそうです。他にも本、洋服、農作業の道具など思い出の詰まった大切な品がたくさんありました。
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この日、理容室には午後になってもお客さんは誰も来ませんでした。道内屈指の米どころ・厚真町は10月上旬から中旬までが収穫のピーク。晴れている日にできるだけ稲刈りをおこなうため、理容室に行っている暇がないんです。

午後5時、この日1人目のお客さんは農家を営む男性です。雨降りで稲刈りできないため髪を切りにきました。「稲刈りしたくてもできない人の悔しい思いもあるから、自分は頑張って稲刈りしておいしいお米を食べてもらいたい。」と話してくれました。

震災後、水が出ない中、お店を再開した時、父・頼明さんが言いました。「いつも通り(サインポールを)くるくる回しておけば元気が出るしょ」と。厚真町で唯一の理容室は町の情報交換の場所になっていました。
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