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【命を守る】緊急地震速報に新たな情報…「長周期地震動」とは

気象庁は2月1日から新しい緊急地震速報の運用を始めました。
14階を超えるような高層階や免震構造の建物などで地震のときに観測されることがある「長周期地震動」という特殊な揺れ。
シリーズでお伝えしている防災特集「命を守る」。きょうはその仕組みと備えについて考えます。

2011年の東日本大震災。
地震直後には大津波が発生し、東北地方を中心に甚大な被害を与えました。
マグニチュード9.0を記録したその強い揺れは、震源から離れた地域にも到達していました。
これは当時、震源からおよそ400キロ離れた東京都新宿区のビルの中で撮影された写真です。
2階では棚から一部の本が床に落下していますが…同じ建物の24階では棚ごと倒れてしまい、置かれていたモノがかなり散乱してしまっています。

さらに、被害は震源から700キロ以上離れた大阪府内でも—
高さ256メートルのビルでは、52階部分で3メートル近い揺れがおよそ10分間続き、壁面の一部にひびが入るなど、実は大きな被害が出ていました。
その原因となったのが—

(撮影者)「ビルが歪んでいる!」

「長周期地震動」と呼ばれる特殊な揺れ方。
建物が持つ固有の周期と地面の揺れの周期が一致すると、建物がうねるようにしてゆっくりとした大きな横揺れが生じるのです。
通常の揺れ方とどう違うのでしょうか。

(根本記者)「東京都品川区のロボット開発施設で、長周期地震動を体験してみます」

これは「地震ザブトン」という、様々な地震の揺れを再現できる防災訓練用の装置。
まず、ビルの低層階にいるときに東日本大震災と同じ揺れが発生したという想定で体験します。

(根本記者)「揺れが始まりました。小刻みに揺れています」
      「植物も横にかなり大きく揺れていて倒れそうですが、まだモノが落下するなどの被害はありません」
      「揺れが収まりました。特にモノが落ちたりするなど大きな被害もなく、恐怖を感じるほどの揺れでもありませんでした」

続いて、同じビルの高層階でまったく同じ地震が来た場合を体験します。

(根本記者)「揺れが始まりました。先ほどよりもすでに大きな揺れが始まっています。前後左右にかなり揺れているのがわかります」
      「いまにも植物やテレビが倒れそうです。いま植物が倒れ、壁からもモノが落ちてしまいました」
      「体を大きくゆさぶられています。手すりを握っていないと恐怖を覚える揺れです」
      「右側の棚が倒れてしまいました!ソファの上にいると危険ですね。棚からモノが散乱してしまっています」
同じ地震でも、階層によって揺れの大きさが明らかに違うことがわかりました。

東京都墨田区の施設では、こうした揺れ方に理解を深める人たちの姿もありました。
(体験者)「ゆったり揺られると気持ち悪くなるような感じ」
(体験者)「ちょっと気持ち悪い。車酔いするような感じ」

震源から離れていたり、震度としては大きくなくても被害が発生することを受けて、気象庁は2月1日から長周期地震動に関する新たな運用を始めました。

まず、観測される長周期地震動の揺れの大きさを4つの階級にわけます。なかでも階級3と4は、立つのも困難になり部屋の家具などが動いたり倒れたりするほどの揺れです。そこで気象庁は、きょうから緊急地震速報の発表基準に階級3以上の長周期地震動を予測した場合を新たに加えました。

(札幌管区気象台 阿南恒明 地震情報官)「非常に大きな地震が発生した際には、大きな地表での揺れとともに長周期地震動が広く観測されると思いますので、地表の揺れだけではなくて長周期地震動についても対策を取っていくことが求められています」

★スタジオ)
長周期地震動の大きさは4つの「階級」で分けられます。「震度」とは別物であることに注意が必要です。
階級3と4は特に揺れが大きく、けがをする可能性もあることから、緊急地震速報の発表条件に含まれることになります。
そして「長周期地震動」ですが、道内でも過去に被害が出ていました。
私たちはどのように備えたら良いのでしょうか。

「土砂が流れ込み住宅が押し流されています」
2018年9月6日未明、北海道を襲った胆振東部地震。夜が明けて明らかになったのは、斜面が崩れ落ちてむき出しになった山肌の数々でした。
札幌管区気象台によると、高いところで特に揺れが大きくなる長周期地震動が、山の上部が崩落した一因とみられるということです。
震源地の厚真町では、このとき階級4の長周期地震動が発生していました。

道内での被害はほかにも—
(記者)「火が収まる気配はありません。現場付近は非常に風が強くなっていて、火の勢いはむしろ強くなっている印象です」
2003年9月26日に発生した十勝沖地震。十勝地方などで最大震度6弱を観測したこの地震により、震源からおよそ200キロ離れた苫小牧市の石油タンクでは、大規模な火災が2度にわたって発生しました。
その後の分析で明らかになったのが—

(出光興産 高橋正則さん)「十勝沖地震の長周期地震動によって大きな共振が発生し、タンクの液面が上下に波打つスロッシングが発生しました」

大きく横に揺られ、タンク内の液面が上昇。そこに揺れで金属がこすれて生じた火花が引火し、大規模火災を引き起こしました。
当時の反省を生かし、この施設ではその後様々な対策をとっているといいます。

(出光興産 高橋正則さん)「再発防止のためにタンクの構造強化をしています。万が一スロッシングが発生したとしても溢流しないように、液面を約2メートル低くするといった対策をしています」

対策が必要なのは、こうした巨大な施設に限りません。
専門家は、高い建物がこれまで少なかった道内でも注意が必要だと指摘します。

(北海道大学 高橋浩晃教授)「札幌市内では現在、再開発で高い建物が建っていますし、今後も増える予定と聞いているので、長周期地震動に対する対策もセットで考えていただきたいです」

建物の高層化が進む地区で、長周期地震動への備えはどうなっているのか—
札幌駅北口で建築が進む、高層マンションの建築工事現場を訪ねました。
48階建て・高さ175メートルと東北以北で一番の高さとなるこの建物で採用されていたのは—

(大成建設 辰濃達さん)「こちらが制震装置です。制震装置のこの部分は特殊な鋼材で、建物が揺れたときに変形することで地震エネルギーを吸収する仕組み」

あえてやわらかい素材を使うことでエネルギーを吸収し、ビルへのダメージを減らす技術が使われていました。

(大成建設 辰濃達さん)「長周期地震動を含めた発生する地震すべてに対して有効にはたらく仕組みです」

一方これらの技術があっても、個人でも対策を進めるよう専門家は呼びかけます。

(北海道大学 高橋浩晃教授)「長周期地震動対策は、警報が出てから何か対策をするということはできないので。長周期地震動対策の第一はやはり事前の対策になりますので、必ず家具の固定をお願いしたい」

震源から離れていても被害をもたらすことがある長周期地震動。
建物の高層化が進むにつれて、この揺れに直面する可能性が高まるなか、これまで同様、一人ひとりの備えが大切です。

★スタジオ)
長周期地震動で特に揺れるとされているのが
・60メートル越えの高い建物
・長い橋や吊り橋
・免震構造の建物
などとなっています。

免震構造は、高さが低い一般の住宅でも揺れるように設計されているので、高くないからといって油断するのは禁物です。


大切なのは
・部屋の家具などを固定すること
そして
・そもそも家具などを置く場所に注意することです。

(2023年2月1日放送)
「どさんこワイド179」  4/18(火)16:33更新

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