背景に電力需要増加か 審査合格から4か月余り…知事の同意表明に賛否 泊原発再稼働・北海道
(鈴木知事)「このたび、泊発電所3号機の再稼働に同意することとした」
泊原発3号機について論戦が交わされてきた道議会。
鈴木知事は12月10日、再稼働への同意を表明しました。
北電が2027年早期の再稼働を目指す泊原発3号機。
前提条件である「地元同意」が出揃ったことになります。
立地4町村のひとつ、泊村の村民はー
(泊村民)「反対している人はいないんだよね、いいと思いますよ」
(泊村民)「ここまで来たんだからね」
(泊村民)「村の活性化、福祉も充実した村にしてくれている」
一方で、議論は不十分という声もー
(札幌市民)「いろんな情勢をかんがみて再稼働はしかたないと思いつつも、説明は不十分かなと思います」
(札幌市民)「家計の負担は大きいので、少しでも(電気料金が)下がってくれたらうれしいが、突然再稼働の意思に転じたような感じもする」
(反対派)「原発いらない!再稼働反対!」
道庁の前では反対の声が上がりました。
札幌市の秋元市長は今後、避難計画などについて協議する方針です。
(秋元市長)「市民の安全にも関わりかねない問題ですし、なにか緊急の対応があるときに避難者を受け入れる立場ですので、北海道や関係自治体と詰めていかなければいけない」
道民・道議会・関係自治体の意見を踏まえて総合的に判断すると繰り返してきた鈴木知事。
なにが判断材料になったのでしょうか。
泊原発3号機は2025年7月、12年に及ぶ審査に合格。
福島第一原発事故後の新規制基準に適合していると認められました。
最大の山場を越えた北電は10月。
(北海道電力 斎藤晋社長)「規制料金ではご家庭向け電気料金で現在の料金と比較して11パーセント程度の値下げ」
北海道の電気料金が全国的に高い水準にあるなか、再稼働後の値下げ幅を発表。
知事の同意判断を後押ししました。
「地元同意」をめぐっては国が8月、道のほか地元の4町村に「理解要請」をしました。
その後、泊村を皮切りに神恵内村・共和町・岩内町が次々に同意を表明。
12月4日、鈴木知事は泊原発で防潮堤工事などの安全対策を視察したあと、4町村の首長と面会し、同意に至った背景を聞き取りました。
(鈴木知事)「首長の方々の判断は極めて重い」
道は9月から11月にかけ、後志管内や札幌などで13回にわたり住民説明会を開催。
国や北電の担当者が原発の必要性を説明しましたが、参加者との間で議論がかみ合わない場面も見られました。
(参加者)「道庁が主催ですよね?再稼働いけいけどんどんのような話ばかり伺ってびっくりしました」
「地元同意」が急がれる背景には、今後見込まれる電力需要の増加があると専門家は指摘します。
(北海道大学(原子炉工学) 奈良林直名誉教授)「ラピダスの半導体工場がありますね、たくさんのデータセンターが建設されている。大量に電気が必要になってきた。いまの段階で地元同意がとれていないと、安全対策の工事が終わった段階で速やかに再稼働できない状態になりかねないので、タイミング的にぎりぎりのところに来ている」
知事の同意に対し、立憲民主党道連は先ほど抗議声明を出しました。
(立憲民主党道連 笹田浩幹事長)「審査が通過したときからフェーズが変わって、わずか4か月という短時間で同意判断に至ったことに私たちは非常に遺憾に思う。いままでの議会議論はいったい何だったのか」
再稼働の判断について鈴木知事はー
(鈴木知事)「電気料金の引き下げが見込まれるとともに、電力需要の増加が想定される中で安定した電力供給が確実なものとなること、道内での投資促進や雇用の拡大にもつながることなどから、このたび、泊発電所3号機の再稼働に同意することとした」
北電は「一人でも多くの皆さまからご理解いただけるよう、安全対策工事に総力を挙げて取り組んでまいります」とコメントを発表しました。
審査合格から4か月余り、依然再稼働に対する慎重論が残る中、知事は「同意」の判断に迫られたかたちです。