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勤務中に脳出血で救急搬送「失語症」になった医師 家族に支えられ…職場復帰を目指す日々に密着

脳梗塞や脳出血などで脳が損傷し、言葉に障害が残る「失語症」。

患者の多くは中高年で、職場復帰が課題となっています。

その「失語症」と向き合い、医師として再び働くことをめざす男性を取材しました。

脳出血で倒れた医師 右半身にまひ残る

(本間理央さん)「はみがき はーみー」「ブタさんもイイイのイーして」

札幌市に住む本間理央さん48歳。

妻の峰沙さんと2歳の娘の3人で暮らしています。

本間さんは右手を思うように動かすことができません。

文字も利き手ではない左手で書きます。

(本間理央さん)「ちょっとまだ変だけど、最近はもうこれしかないので」

長沼町のクリニックで医師として働いていた本間さん。

フルマラソンにも挑戦するほど活動的な日々を送っていました。

Q.何時間で完走を目指す?

(本間理央さん)「4時間半~5時間の間かな」

しかし、2024年12月、勤務先で突然、ろれつが回らなくなり救急搬送されました。

脳出血でした。

一命はとりとめましたが、左脳の一部が損傷し、右半身にまひが残りました。

障害はこれだけではありません。

言葉を思い通りに出せなくなったのです。

診断は「失語症」 話を理解できても言葉にできず…

(本間峰沙さん)「倒れた当初は“ま”しか言えなかった。最初はうなずきだけ“うんうん”だけだったんですけど、今度口を開いたと思ったら“ま”しか言わなかったので」

このとき本間さんは「失語症」と診断されました。

失語症とは脳の言語中枢が損傷し、話す・話を聞いて理解する・読む・書くことが難しくなります。

(本間理央さん)「うーんと…」

(本間峰沙さん)「建物の写真?」

(本間理央さん)「うーんと、うーんと…」

話はほぼ理解できるものの、言葉にすることができません。

(本間理央さん)「ことばが出ないというか、いろんなことで頭の中でループしちゃって(ことばが)出てこない感じ。気持ちが…伝わらないというか」

発症から1年あまり。

本間さんは週に2回、言葉のリハビリを続けています。

(本間理央さん)「カレーライス」「目玉焼き」

(訪問看護ステーション健助 江面幸啓言語聴覚士)「もう1回やりましょうか」

(本間理央さん)「エビフライ」

地道な努力で言葉を徐々に取り戻してきました。

(訪問看護ステーション健助 江面幸啓言語聴覚士)「書く練習をやっていきましょう。カッコのなかに続く文章などをどんどん書いていきます」

(訪問看護ステーション健助 江面幸啓言語聴覚士)「ひっきりなしに車が通るから」

(本間理央さん)「安全に気をつけて」

(訪問看護ステーション健助 江面幸啓言語聴覚士)「そうですね。気をつけて渡りなさいが良さそうですね」

(訪問看護ステーション健助 江面幸啓言語聴覚士)「キーワードが頭の中では繋がってはいるんですけど、それを繋ぐ言葉を少し間違えたりする。失語症はいろんな症状が、しゃべれない以外にもあるので、そういうところの理解が深まっていくといいかなと」

毎日リハビリ続けるわけ…「内科医師としてやりたいこともある」

本間さんは麻痺した右半身のリハビリも毎日続けています。

(津村社長)「もっと上げる、もっと上げる。にじゅう~はち、にじゅう~きゅう、さん~じゅう。はい、息止めない、深呼吸」

Q.マラソンとリハビリのどちらがつらい?

(本間理央さん)「こっちのほうが」

過酷なリハビリに耐える本間さん。

それにはある目標がありました。

(本間理央さん)「内科医師としてやりたいこともありますし、リハビリをすることによって元気にもっと近づくぞということで」

『医師として、また仕事がしたい』

職場への復帰を目指しているのです。

しかし、失語症患者の職場復帰は難しいのが現実です。

2015年の調査では、仕事に復帰できた患者は1割にも達していません。

(本間峰沙さん)「(医師への復帰について)不安ももちろんありますし、復帰予定のクリニックの理解があってこそだと思うのですが、会話もだんだんとできるようになってきて、できないことを探すよりも、できるようになってきたことを増やしていくというか、できることをどんどん探していく。夫と一緒に前向きに、そこに対して私もできるサポートをしていきたいなという思いで今はいます」

医師復帰に向けて…クリニックの協力受けてトレーニング

この日、本間さんはある場所に向かいました。

勤務先のクリニックです。

2026年に入ってから医師復帰に向けたトレーニングを始めました。

スタッフが勤務の合間を縫って患者役を買って出ます。

(本間理央さん)「まずおなかの初診を…んーと、ごめんなさい、おなかの触診を行いましょうか」

(スタッフ)「あ、はい」

診察を終えてからカルテを作成。

何度も直しながら時間をかけて入力します。

(スタッフ)「また患者さんに寄り添う本間先生を見たいなって思うので、私たちは待っています。ありがとうございます」

クリニックでは今後、患者への理解を進めるなどして、働きやすい環境を整えたいと話します。

(みどりクリニック長沼 笹島順平理事長)「頑張っている人はやっぱ応援したいと思うんですね。医療も全てそうですけど、個人の問題じゃなくてチームでやるものですから。その中で一つの役割として、本間先生が本間先生なりに活躍できれば僕はそれでいいと思う」

毎年さっぽろ雪まつりを楽しみにしている本間さん。

2025年は入院中でしたが、2026年は仲間たちと一緒に来ることができました。

楽しみはもう一つ。

友人の歌手のライブです。

(浅井未歩さん)「よくやってきたね 本当に お疲れ様 あなたの幸せ 願っているよ 色々ある人生だけど どんな瞬間も愛せたらいいな」

頑張る人をねぎらう歌詞が本間さんを勇気づけます。

(本間理央さん)「みなさんにパワーをもらっています。まだまだ頑張れる。それが生きる力になると思います」

伝えたい思いがうまく話せない苦しみ。

それでも、元のように言葉を取り戻したい。

家族や仲間に支えられ、「失語症」と向きあい続けます。

03/15(日) 07:23

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