美瑛町と上富良野町を襲った“大正泥流”から100年…また噴火した十勝岳 紙芝居に想いを託す
7月に22年ぶりに噴火した北海道・十勝岳。
ちょうど100年前にも大噴火し、大量の泥流で多くの人が犠牲になりました。
小説にもなった「大正泥流」です。
活火山と共生するふもとの人々の「いま」。
山の日の8月11日、「火山」のことを考えます。
美瑛町と上富良野町を襲った「大正泥流」手記をもとに紙芝居を制作
(林記者)「先ほど噴火した十勝岳です。音やにおいなどの異常は感じません」
7月6日、規模は小さかったものの、2026年3回目の噴火。
(渡辺カメラマン)「火口からは白い噴煙が立ち上っている様子が確認できます」
7月22日、22年ぶりに噴火した十勝岳。
1926年5月24日に十勝岳は大噴火。
泥流がふもとの美瑛町と上富良野町を襲いました。
「大正泥流」です。
(紙芝居)「そのころは水もだいぶ引けていましたが、ドロドロの赤い水が流れていました」
「大正泥流」を紙芝居で伝える佐川泰正さん73歳。
(紙芝居)「お昼ちょっと過ぎだったか、突然十勝岳の方で雷の鳴るような音が一つ聞こえました。みんな不思議だと思ったようでしたが、まだ爆発のことは考えもしませんでした。下から片倉さんが走って上がってきました。水だ!水!水が流れてくるから早く逃げろ!と言う間もなく、沢いっぱいにガスとも水ともつかぬものが一瞬のうちに流れてきたのです。山の木も縦になって飛び跳ねて流れていました」
「大正泥流」で辛くも生き残った祖母のいとこ。
その手記をもとに、2024年に紙芝居を制作しました。
(紙芝居)「もしや家族の者がはい上がっていないかなと思って探しましたが、一人も助かっていなかったのです。家族も家も馬も道も食べ物も生活も全てがなくなりました」
噴火翌日の映像には…100年経ったいまも「泥流の爪痕」
噴火の翌日に撮影された記録映像には、想像を絶する光景がー
死者・行方不明者は144人。
20世紀以降、国内最悪の火山災害です。
佐川さんの祖父母も被災。
親せき12人も犠牲になり、家や畑を失いました。
(佐川泰正さん)「日新地区の方は流木が縦になって山を削り取るわけですから、山肌を一気に取ってしまう。全体が泥流で埋もれました。30年間でやっと作った畑、田んぼ、すべてが一気に失ってしまうわけなんですね」
100年経ったいまも「泥流の爪痕」がはっきりあると、佐川さんが案内してくれました。
(佐川泰正さん)「砂利の層が40~50センチあるんですけど、これが流れてきた泥流です」
「泥流の証明」。
100年前の分厚い泥流の層がはっきりとー
(林記者)「ちょっと触ってみます。軽い石が多くて泥が混じっている。臭いはそんなにしない」
(佐川泰正さん)「苦難と困難の戦いの歴史が、断面を見ることによってわかると思います」
あれからちょうど100年。
22年ぶりに山が噴火したのは果たして偶然なのかー
佐川さんの言葉にもいっそう力がこもります。
(佐川泰正さん)「気持ちの風化は絶対あってはならない。それが災害に対する準備でもあるかなと思っています。そのために地域に眠っているいまは見ることのできない、隠れている歴史を掘り返して、心の歴史を伝えていきたいなと考えています」
22年ぶりに噴火した十勝岳「突発的に噴火する可能性はゼロじゃない」
(朗読)「耕作はハッとした。『助けてーっ!』ふりしぼるような女の声がした』
8月23日に上富良野町で開かれる「朗読甲子園」。
出場する旭川永嶺高校放送局の練習も佳境を迎えています。
朗読の課題図書は、旭川出身の作家・三浦綾子さんの「泥流地帯」。
まさに大正泥流を書いた三浦さんの代表作です。
(旭川永嶺高校 荒谷春緋さん)「命をもうちょっとで絶とうとしていて、泥流に向かって一歩足を踏み出そうとしたときだった、その時に助ける」
(旭川永嶺高校 竹村芽依咲さん)「かっこいいですよね、そのシーン」
(旭川永嶺高校 竹村芽依咲さん)「泥流のおそろしさとかを下の世代の人に伝えられるようがんばりたいです」
(旭川永嶺高校 大石采明さん)「過去のものじゃなくて、こういうことがあったから、いまがあたりまえじゃないんだよっていうのを伝える意味でも、この本は他の若い人にも読んでもらいたいと思いました」
(渡辺カメラマン)「火口からは白い噴煙が立ち上っている様子が確認できます」
2026年に22年ぶりに噴火した十勝岳。
自然の驚異は遠い昔の歴史ではありません。
これは「大正泥流」を再現した映像です。
流れる大量の泥は最高時速100キロ以上とも。
猛烈な勢いで家や木を飲み込みます。
悲劇の教訓のひとつがこの「砂防ダム」です。
スリット…鋼鉄の構造物が岩や流木をせきとめます。
実はこのような砂防施設が、意外な効果も!
それがあの有名な…美瑛が誇る観光名所「青い池」です!
池のすぐそばにもコンクリートのブロックがー
(ジオパークガイド 小倉博昭さん)「ここも火山の対策、泥流対策の砂防施設になります」
国の内外を問わず多くの人を魅了する観光資源は、砂防ダムによって美瑛川の水が溜まりできたものなのです。
砂防施設を観光資源と捉えた取り組み「インフラ・ジオツーリズム」を町は進めています。
(ジオパークガイド 小倉博昭さん)「まずは美しいから見に来ていただけるのですが、その美しさの中のこういうものが出来た理由を分かってもらいたいかなと。人の命を守るという一生懸命工事をしたあげく、この美しさが生まれている」
小規模な噴火を繰り返す十勝岳。
専門家は備えについてこう強調します。
(旭川地方気象台 小山寛火山防災官)「活火山なので、突発的に噴火する可能性はゼロじゃないと思っています。火山のことに関心を持っていただいて、実際どんなことが起きうるということを普段から気にしてもらえれば“正しくおそれる”ということができると思います」
大正泥流から100年の年に22年ぶりに噴火した十勝岳。
紙芝居に思いを託す佐川泰正さんは、きょうも伝え続けます。
「気持ちの風化はあってはならない」
