「JRからは『動くかもしれない』と繰り返された」新千歳空港はなぜ“陸の孤島”と化したのかー 大雪で浮き彫りとなった連携不足
先週、記録的な大雪で新千歳空港では7000人の利用客が足止めとなりました。
なぜ空港が「陸の孤島」と化したのかー
誤算が続いたJRと、空港のホットラインの内容が明らかになりました。
<1月25日>札幌で記録的な大雪に…新千歳空港は大混乱
北海道の空の拠点・新千歳空港。
2025年の旅客数は初めて2500万人を突破し、コロナ禍前の最多記録を更新しました。
しかし、利用客からは雪に対する不安の声が多く聞かれます。
(神奈川から来た人)「ずっと天気予報を見ていたよね。レンタカーをキャンセルするか直前まで迷っていました」
(神奈川から来た人)「大丈夫かなって気にしていました」
1月25日、札幌は朝から視界を遮るような激しい雪に見舞われました。
(井上カメラマン)「ホワイトアウトですね。先が見えないです」
除雪が追い付かず、市内のいたるところで車が立ち往生。
交通機関がマヒし、市民生活に大きな影響が出ました。
なかでも大混乱となったのがー
(松田カメラマン)「新千歳空港1階、到着口前にはJRの運行再開を待つ人で長い列ができています」
新千歳空港には過去最多の7000人が足止めにー
まさに「陸の孤島」となったのです。
(百瀬記者)「1日に7万人近くが利用する新千歳空港。なぜ7000人もの利用者が足止めされたのか。当時の北海道エアポートとJRとのやり取りが取材で明らかになりました」
北海道エアポートとJR北海道の“やりとり”が明らかに JRの情報は二転三転
当日、JR北海道と空港を運営する北海道エアポートはそれぞれ対策本部を設置し、ホットラインでやりとりをしていました。
JRは午前11時から午後2時までの間、「大幅な遅延はあるものの、運休の見込みはない」と回答していたといいます。
しかし、午後2時36分、JRから北海道エアポートに連絡がー
(JRの担当者)「札幌駅・苗穂駅などの除雪のため、午後3時から午後6時の予定で運休する」
さらに、その後もー
(午後5時10分の連絡)「運休を午後9時に延長」
(午後7時の連絡)「午後11時に延長する」
(JR北海道 綿貫泰之社長)「ポイント不転換が発生しまして、除雪機械が出ていけなかった。ずるずると除雪作業が後ろ倒しになってしまった」
大規模な運休が発生したのは、列車のブレーキ装置の凍結が相次いだことも要因だと説明しました。
当時、JRの情報が二転三転とするなか、空港には続々と飛行機が到着していました。
(北海道エアポート担当者)「JRが動くと思って航空機は着陸してくる。JRからは『動くかもしれない』と繰り返された」
JRの運行状況はホットラインだけでなく、各航空会社も含めた情報共有サイトでも「動くかもしれない」と連絡が入っていました。
そのため、飛行機は各空港から予定通りに新千歳に着陸。
JRのほか、空港連絡バスも運休し、利用客だけが続々と空港内に溜まっていったのです。
<1月26日午前2時半>空港内で出回り始めた“デマ” 「事件事故が起きる可能性があった」
日付が変わり、26日午前2時半、JRの案内板の前には運転再開を待つ人の姿がー
1階の到着ロビーにいた女性は、複数のデマが回り始めたといいます。
(足止めされた女性)「前回は(午前)3時に列車が動き始めたので、3時じゃないかと言う方もいて。毛布を配っているらしいみたいな。毛布はどこで配っているんですかと聞かれたこともあって」
実際には毛布などは配布されていませんでした。
北海道エアポートでは災害時のために毛布や寝袋などを準備しています。
しかし、想定している収容人数は3500人。
今回はそれをはるかに超えていました。
(北海道エアポート担当者)「この人数では寝袋などが一部の人にいきわたらない。インバウンドも多い中、配布し出すと人が殺到する。事件事故が起きる可能性があった」
安全性を保つことができないと判断し、館内の温度を上げるなどの対応にとどめたということです。
北海道エアポートとJR北海道で異なる認識 連携うまくいったは「間違っていた」
危機的な状況から一夜明け、JR北海道は記者会見でこう説明しました。
(JR北海道 佐藤一朗運輸部長)「HAP(北海道エアポート)とは(連携が)うまくいったというのが実感。引き続き連携を強化していきたい」
しかし、北海道エアポートの認識は異なっていました。
今回浮き彫りとなったのが、JRと関係機関の連携不足です。
実際、ホットラインの運用で発覚したのがー
(北海道エアポートの申し入れ)「電話がつながらない。除雪作業、運行再開の見通しが過度に楽観的である」
JRの情報提供が不十分で、航空便の発着制限などができなかったとして、JRに異例の抗議をしました。
(山岡記者)「26日の会見で、北海道エアポートとの連携はうまくいった実感があるという説明がありましたが?」
(JR北海道 綿貫泰之社長)「間違っていたということです」
(山岡記者)「連携はうまくいっていなかったということですか?」
(JR北海道 綿貫泰之社長)「うまくいっていなかった」
綿貫社長は情報提供の遅れなどを謝罪したうえで、今後は担当者の人数を増やすなどして、情報共有の質の向上に努めていく考えを示しました。
(鈴木知事)「私からも直接、綿貫社長に懸念をお伝えした。早急にHAP(北海道エアポート)とJRで話し合いをするべき」
<1月31日>その後も雪の影響続く ホットラインの運用は…
雪の影響は1月31日もー
(山本記者)「JRに運休や遅れが発生し、長い列ができています」
再び交通機関が大きく乱れました。
大規模な滞留はありませんでしたが、ホットラインの運用についてJR北海道は、「状況をより細かく伝えるようにした」とコメント。
一方、北海道エアポートは「機能したかどうかについては現時点で判断できない」としています。
予測できない気象の変化が増えるなか、専門家は無理に列車を運行せず、早めに運休を決めることが重要だと指摘します。
(交通・航空政策が専門 桜美林大学 戸崎肇教授)「例えばJR西日本は台風が近づいてくるとかなり早めに計画運休をするようになっている。たしかに客の立場に立てば、できるだけ動きたいという欲求に鉄道会社は応じたいことはわかるが、その一方で混乱を引き起こすことはもっと悪い事態。それを避けるべく早め早めの思い切った決断が必要だと考える」
北海道の交通の要、JRと空港がいかに現場の状況を共有し、早期の決断につなげられるか。
その連携の質が、利用者の安全を左右します。