ニュース

NEWS

先行き不安で“離農”決断も 岐路迎えた北海道のコメ作り 日本の主食を守る…農家の苦悩

実りの秋を迎えた北海道。

しかし、コメ余りによる価格の下落に高齢化や担い手不足、北海道のコメ作りがいま大きな岐路を迎えています。

揺らぐコメ作りの現実を追いました。

新米の季節!…おいしさの裏にあるコメ作りの現実

2026年の新米を炊き上げたほかほかのご飯、食欲をそそります。

このコメが生産されたのが、道内有数のコメどころ・蘭越町です。

ニセコ連峰から湧き出たミネラル豊富な水が良質なコメを育てます。

9月に収穫されたばかりの新米を子どもたちが味わっていました。

(子ども)「おいしい」

この笑顔の裏でいま、コメ作りの現場は大きな岐路を迎えています。

町内にあるJAの倉庫を見せてもらうと…

(JAようてい蘭越支所 川瀬恭平販売課長)「こちらが令和7年産のコメになります」

2025年産のコメはおよそ600トンほど保管されていて、例年の2倍残っているといいます。

(JAようてい蘭越支所 川瀬恭平販売課長)「需給の変化に伴いまして、(契約先の)引き取りのペースが緩やかになっていることが原因かと思います」

「令和のコメ騒動」その反動が農家に

この深刻なコメ余りの影響を感じているのが、蘭越町のコメ農家・金子辰四郎さんです。

“概算金”が大幅に下がり、頭を悩ませているといいます。

(コメ農家 金子辰四郎さん)「期待はしたけれども、やっぱり(概算金の)数字がコスト指標よりも下回った」

JAがコメ農家に前払いする「概算金」は、ななつぼしで1万7000円と2025年からおよそ4割下落。

農水省が主導して設定したコメの生産に必要な経費の目安である2万535円を下回る金額となったのです。

原因は2025年の「令和のコメ騒動」。

政府が備蓄米を放出しましたが、コメ離れなどもあり深刻なコメ余りを招きました。

2026年6月末の全国のコメの民間在庫は、過去最大の243万トンに膨らみ、概算金の引き下げにつながったとみられています。

金子さんもできる限り生産コストを抑えていますが、限界があるといいます。

例えば、収穫に使うコンバイン。

(コメ農家 金子辰四郎さん)「せいぜい3週間くらいしか年間動かないから。それで、このタイプだと1500万ぐらいします」

さらに、田植えに使うドローンの価格はおよそ1000万。

コメの保管に必要な乾燥機は、購入に200万円以上かかります。

(コメ農家 金子辰四郎さん)「もみすり機もことし更新しようと思って注文はしたけどまだ入ってこない。とりあえずは応急処置しながら、部品交換したりして使ってはいるんだけど。いろんなところが消耗・摩耗してくるからね」

こうした農機具は、定期的なメンテナンスにもまとまった経費がかかるため、概算金が下がった影響は大きいといいます。

(コメ農家 金子辰四郎さん)「かかったコスト以上の収入が得られないと、再生産、来年も作ろうかっていう気持ちにならなくなる。利益が上がらないと、後継者、若い人らにもがんばってやれって言いづらいよな」

政府はコメ余りを改善するため、2025年に放出した備蓄米の買い戻しを進める方針ですが、専門家は農家を守るためにも、もっと積極的に関与すべきと指摘します。

(酪農学園大学 相原晴伴教授)「備蓄米に限らず、流通の在庫を政府が買い入れる。コメの価格を農家が安定的に生産できる水準に維持していくということが政府に求められる」

“父から受け継いだ田んぼを手放す” 離農を決意した農家

先行きへの不安が広がる中、生産現場では離農を決断する農家も少なくありません。

(コメ農家 柳谷要さん)「いいコメですよ。光沢があるでしょ」

同じ蘭越町のコメ農家・柳谷要さん78歳です。

18歳のときからコメを作り続けて60年。

使う農機具も年季が入っています。

(コメ農家 柳谷要さん)「これ(トラック)も30年。これも30年選手。おれが壊れるか、こいつが壊れるか」

高齢に加えて、ひざを悪くして手術したこともあり、2026年でコメ作りをやめることにしました。

(コメ農家 柳谷要さん)「私の健康だけではなくて家内の健康もあるから決断しなければいけないと」

(妻・昭子さん)「(農作業は)楽しかったです。一つ一つ区切りをつけて仕事を進めることが(楽しかった)」

しかし、父から受け継いだ田んぼを娘や息子に継がせることはしませんでした。

コメ作りを取り巻く厳しい経営状況もあったといいます。

(コメ農家 柳谷要さん)「今はもう経済的にも大変な投資を農家がしなければやれない時代になってきている」

(妻・昭子さん)「若いときなんか夜は遅く朝早くでしょ。本人たちがやる気がないとできないと思うよ、農家は」

この日、最後のコメ収穫に向かった柳谷さん。

気になっていたのは、今後のコメ農家の経営についてでした。

(コメ農家 柳谷要さん)「コメの値段や農作物の生産費が保障されるような。農家が来年のことを真剣に考えられる、そういう価格であってほしい」

実は柳谷さん、コメ作りをやめますが、田んぼ自体はなんとか将来に残したいと考えていました。

そこで、意欲のある人に田んぼを引き継いでもらいたいと、2025年におよそ1億円かけて水路などを再整備したといいます。

(コメ農家 柳谷要さん)「私が農家をやらないとなったら誰かに引き受けてもらうことになるわけですよね。その時にやっぱりより良い条件で作ってくれる人に引き渡す」

ぼを守り続けます。

未来農業のため “思い”つなぐ

その思いを受け継ぐ人がいます。

柳谷さんの隣でコメを作る農家の田村さん夫妻です。

2027年から柳谷さんが守ってきた田んぼを引き継ぎます。

(コメ農家 田村陽子さん)「受け継いだものをちゃんと管理して、生活をちゃんとできるような農業をこの地で育てていきたい」

その田村さんが力を入れているのが、子どもたちへの農業体験です。

子どもたちにコメ作りの苦労ややりがいを肌で感じてもらう。

その経験が未来の農業につながると考えています。

(コメ農家 田村陽子さん)「農業の道を選択肢の一つとしてあってくれれば嬉しいし、そういう若い、小さい子たちと目線を合わせながら訴えていく。それが結果として、日本の農業を守ることになるのではないか、理解してもらえるのではないかなって」

(コメ農家 田村俊一さん)「コメの大幅な下落はあるんだけども、悲観することなく、頑張って乗り越えていくしかないなと思っています」

私たちの食卓を支える「コメ」。

これからも安心して作り続けられるように。

そして若い人が希望を持てる職業になってほしい。

そう願いながら生産者たちはきょうも田んぼを守り続けます。

10/12(月) 00:00

ニュース

北海道の最新ニュース STVニュース24