後継者不足に悩む回転ずし店「北海道を代表する店に…」事業継承の動き活発化 地域密着企業存続へ
後継者不足に悩む最北の回転ずし店から、札幌市民の足を支えるモノづくりの現場まで。
事業を引き継ぐ動きが活発化しています。
地域に根差した企業の存続を図った狙いとはー
創業20年…事業の継続が困難に 現れた救世主は?
プリっと身が引き締まったホタテに、つややかな輝きは新鮮さの証・タコ。
脂がのったソイはこの時期が旬だといいます。
これらのネタはすべて稚内で水揚げされました。
こちらは、稚内市唯一の回転ずし店「花いちもんめ」です。
平日の夕食時にはこのにぎわい、新鮮な海の幸を味わっていました。
(地元の客)「先週お遊戯会があったので、「頑張ったね」みたいな感じできょうは来て。めちゃくちゃ美味しいと思います」
(青柳記者)「どういうネタが好き?」
(子ども)「イクラ。食べたいときとか頑張ったときとか」
特別な行事があったときの「花いちもんめ」。
地元ではそう親しまれてきました。
(青柳記者)「新鮮でとても美味しいです。地元の人に愛されるのも納得です。こちらの店舗、この味を残すために大きな変化がありました」
店は2025年、創業から20年を迎えましたが、後継者が見つからず、事業の継続が困難になっていました。
そこに現れたのがー
(札幌海鮮丸 飯塚隆夫社長)「きょう初めて社員の皆さんとこういった形で会議という形でやらせていただきますけど」
札幌に本社がある宅配ずしの「札幌海鮮丸」です。
11月、「花いちもんめ」の事業を引き継ぎました。
(札幌海鮮丸 飯塚隆夫社長)「稚内という場所なんですけど、非常に魚であったり魅力的な場所であると考えていまして。札幌海鮮丸として外食市場への参入というところは水面下で計画している部分があった。北海道を代表するような寿司ブランドとして今後は発信する、そんなお手伝いをしていきたい」
店の名前は変わらず、従業員の雇用も継続されます。
「花いちもんめ」で腕を振るってきた店長はー
(花いちもんめ 中川亮店長)「突然のことだったので内心は不安でしたけど、正直びっくり。いい社長さんで話もスムーズに聞いていただけたし、いい話ができたと思います」
事業継承の動きが活発化 モノづくりの現場にも
道内ではこうした事業承継の動きが活発になっています。
後継者不足などの相談件数は年々増加し、事業を引き継いだ件数も右肩上がりとなっています。
事業承継の波はモノづくりの現場にも押し寄せていました。
小樽市にある部品製造会社「北海バネ」です。
こちらの長ーい金属板、機械を使って加工するとー
北海道の冬には欠かせない、あの機械のパーツに。
そう!雪を砕いて排雪する除雪機の回転部品でした。
(北海バネ 造田弘幸社長)「みんなのナレッジを全員が共有して営業自体のレベルを上げていこうという」
この会社を率いるのが3年半ほど前、社長に就任した造田弘幸さんです。
実は造田さん、以前は東京にある大手の会社で働いていましたがー
(北海バネ 造田弘幸社長)「北海バネという会社の事業承継の案件があるという話を北洋銀行のグループ会社である北海道共創パートナーズから聞いた時に、皆さんの暮らしを支えているようなパーツメーカーのお手伝いをしたいなと」
北海バネが後継者を探していた2022年、造田さんがスカウトされ、バトンを引き継いだのです。
(北海バネ 造田弘幸社長)「こちらがVバネの工場になります。こちらのVバネはレールと枕木を締結するバネになります」
およそ700℃で熱した鋼を渦状に巻いたこちらのバネ。
意外な場所で札幌市民の暮らしを支えています。
それは、札幌市営地下鉄です。
東西線・南北線・東豊線のすべてに使われています。
どこに設置されているかというとー
(札幌市交通局 小泉威工事担当課長)「こちらの締結装置の中、こちらがVバネになります」
札幌の地下鉄は案内軌条というレールを走りますが、このバネは案内軌条と枕木を固定するボルトに使われています。
バネはこちらの部品に入れて固定されていますが、実はこんな役割もー
(札幌市交通局 小泉威工事担当課長)「列車が走行するときに案内軌条には大きな力、振動が加わります。ですのでこのVバネはその振動や力を吸収して緩和する、そういった役割もございまして、乗り心地の方にも影響しています」
バネは車両の揺れを緩和し、乗り心地の良さにつながっていたのです。
このバネを東京メトロや都営地下鉄など年間およそ20万個も出荷。
全体の売り上げのおよそ1割を占める主力製品の一つです。
(青柳記者)「社長が代わって変化した部分は?」
(北海バネ 高木伸也さん)「全体的にゆったりした会社からしっかりした会社になった印象。自分たちの働いて作ったものがしっかり利益になっているのを見せてもらえているので、それがかなり活気につながっているかなと思います」
(北海バネ 造田弘幸社長)「大事なところをしっかり引き継ぎながら、でもここは変えたほうがいいよねっていう線引きが非常に大事だと思うんですよね。地域に密着したモノづくりの会社をこれから事業を継続させていくということが大事だと思う」
後継者不足の企業の存続を図る事業承継。
地元の人たちの憩いの場や市民の足を支えています。