ケーブル1本で命を預かる「ホイストマン」緊迫する山岳救助の現場 プロフェッショナルに密着
山岳救助のニュースをお伝えすることも多いのですが、ヘリコプターでの救助で大変重要な役割「ホイストマン」の存在をご存じですか?
どんな役割なのか…キーワードは「1本のケーブル」です。
知られざる緊迫の救助の現場。
プロフェッショナルに密着しました。
救助者の命、隊員の安全をケーブル1本で預かる「ホイストマン」
(救助隊員)「ペテカリの登山道。入山口ってどこか分かりますか」
(パイロット)「現場まで40分で現場活動は30分以上とれますので」
基地内に走る緊張。
北海道警察航空隊に山岳救助の要請が入りました。
(パイロット)「この尾根右折したら出てきますよ」
現場は日高にそびえる「ぺテカリ岳」。
男性が山の中で滑落。
(村山慧悟さん)「目標確認しました。左のほうに離脱です。ダブル(2人同時に)降下です」
特務隊員と呼ばれる救助隊員は、このケーブル1本を頼りに地上に降り立ちます。
(救助隊員)「転んだ?すべって転んだ?下来られます?」
(登山者)「足首が折れていますね」
(救助隊員)「折れてる?わかりました」
(登山者)「いたたた」
(救助隊員)「座ってください、無理しないで」
救助者の命、隊員の安全をケーブル1本で預かる男。
それが「ホイストマン」です。
村山慧悟さん29歳。
道警に19人いるホイストマンのひとりです!
(村山慧悟さん)「電源入れます」
道警航空隊に入り8年目、道東の白糠町出身の村山さんは、「航空整備士」の国家資格を持つ技術職員です。
(村山慧悟さん)「これを下げるとホイストが下がってくるような。これを上げると上がるような」
何より大事な村山さんの“商売道具”は、「ホイスト」と呼ばれる巻き上げ装置です。
ヘリコプターに乗り込み、ホイストを操作するから“ホイストマン”。
救助者や隊員の命を預かるケーブル。
長さはビルの30階に相当する90メートルに及びますが、太さはわずか直径5ミリ。
その操作には高度な技術を要します。
「無理なことは無理と言う」意思伝達も重要な役目
ふだん基地内で行われている訓練の撮影が許されました。
(村山慧悟さん)「ドアオープン完了。この地点にシングルシングル(1人1人)で降ろしていきます」
救助の最前線に降り立つ隊員とパイロットの間に立ち、救助を円滑に進める意思伝達もホイストマンの役目です。
(村山慧悟さん)「準備完了エントリー開始。エントリー完了降下開始。はい、いま接地、巻き上げ」
8年目の村山さんは、19人のうち3番目に若いホイストマンです。
命を預けあうチーム。
昼食の間も大事なコミュニケーションの時間。
(救助隊員 薄井碧杜さん)「無理なことは無理ってしっかりおっしゃるんですよね。そういうのってすごく大事で、やっぱりちょっとでも不安があってやると、降りる我々もちょっと怖いですし、やっぱり無理なものは無理って言ってもらった方がいいと思うので、それはすごく冷静に判断していただいていると思います」
村山さんが救助の仕事を志したのは、消防士だった父・隆一さんの背中。
生まれ育った町の人の命を救いたい…と、この道に進みました。
(村山慧悟さん)「自分が生まれ育ったところで救助活動をすることによって、地元に貢献できるのかなっていうのも北海道警察を選んだ理由の一つではあります」
ケーブル1本で人命を預かる極限の毎日。
安らぎは家族の存在です。
(妻・友菜さん)「やっぱり自分の命をかけて困っている人を助けに行くのはかっこいいなっていうのはあって。(ヘリの)色を見てあれに乗っているかもしれないから手振っとくって最近手振って見ているよね、お散歩中に。見えないと思うけど」
(村山慧悟さん)「見えない」
(村山慧悟さん)「ちゃんと現場行って、安全に帰ってこなきゃなっていうのは思うようになりましたね」
太さ5ミリのケーブル1本で安全を手繰り寄せる
この日は実際に山岳地帯での訓練。
(先輩整備士 荒屋さん)「村山さん、斜面に対する反対方向も流れてく方向に行くから、目標よりもちょっと上側にセットしないと、どんどんどんどん下側に落ちてくる」
(村山慧悟さん)「はい」
(先輩整備士 荒屋さん)「それだけ注意してね」
(村山慧悟さん)「はい」
(村山慧悟さん)「エントリー完了、降下開始」
基地内での訓練とは違って、山では地形の影響を受け、強い風が吹き上げます。
求められるより高度なホイストの技術。
(村山慧悟さん)「吊っているポイントを物の真上に持っていくと振れは止まるのと、過度に振れた場合にはいきすぎないように逆の力を加えて振れを止める」
順調に見えたそのときー
(村山慧悟さん)「ホールド吊りました」
(先輩整備士 荒屋さん)「早めに振れ止める。早めに止める止める」
(村山慧悟さん)「ちょっと一旦おろします、カラビナかえってます。カラビナかえっているんで一回接地させます」
隊員とケーブルを繋ぐ金具に不具合発生!
村山さんは直ちに一度陸地に戻す判断を下します。
(村山慧悟さん)「巻き上げ中。準備中。中に入る。収納完了」
(パイロット)「訓練お疲れ様でした」
(先輩整備士 荒屋さん)「最後フックが引っかかって一回降ろしたのもしっかり見ているので、しっかり常に見ておくのが重要だと思う」
(村山慧悟さん)「降りるのは特務隊員で、その特務隊員の安全を預かっている身なので、言われたことは一個一個真摯に受け止めて、次の現場への反省にしたいと思います」
遭難者を救う道警航空隊。
救助者の命を・隊員の安全を守る最後の砦・ホイストマン。
(村山慧悟さん)「実際には訓練だけで終わるのが、やっぱり自分たちの中では一番幸せなことかなと思っています」
ヘリコプターでの救助になくてはならないその存在は、太さ5ミリのケーブル1本で安全を手繰り寄せる、プロフェッショナルなのです。
