【潜入】トンネル工事“最大の難所” 大幅延期の新幹線札幌開業 事業費膨張…まちづくりへの影響は?
2038年度末以降と大幅に遅れることになった北海道新幹線の札幌開業。
それに伴い、事業費も大きく膨らむ見通しです。
開業が遅れる要因となった、難航するトンネル工事の現場を取材しました。
渡島トンネル・台場山工区です。
(鉄道・運輸機構北斗建設事務所 鳥井宏之工事長)「こちらはトンネルの一番最先端のところで、もともとここの工区は火薬を使って掘削をするんですけど、爆破した後を重機を使って整える作業をしています」
渡島トンネルは、開業時期の遅れを決定づけた最大の難所です。
掘削中、トンネル内に土砂が流入するなど、崩れやすく軟弱な地盤が工事を阻みました。
(鉄道・運輸機構北斗建設事務所 鳥井宏之工事長)「一番遅かった時は1日1メートル、月で約20メートルという時期もあったが、最近は月30~40メートル」
新函館北斗から札幌への延伸を目指す北海道新幹線。
長さ212キロのうち、その8割をトンネルが占め、渡島トンネルのほかにも難工事が続いています。
羊蹄トンネルでは、巨大で硬い岩の塊がシールドマシンと呼ばれる掘削機のゆく手を阻み、工事が一時中断。
札樽トンネルでは掘削工事で重金属を含む土砂が発生。
受け入れ先の確保が難航し、工事に遅れが出ました。
このため、国の有識者会議は3月、2030年度末を目指していた札幌開業が2038年度末以降になる見通しを報告しました。
有識者の1人・北海道大学の岸教授は、トンネル工事にはリスクがはらんでいると指摘します。
(北海道大学大学院工学研究院 岸邦宏教授)「絶対これがあっているかはやってみないと分からない。だけど技術的にいろいろ検討した中で最大限いえるところはここだっていうことを有識者会議でまとめた。そこを決めるところが難しかった。2030年というのは、やっぱりできると言ってしまった責任は技術者の中にもあると思う。相当詰め込んで無理をしてなので、ベストコンディションでうまくいけば2030年に間に合う状況だった。それはある種、無理があったのは否定できない」
カギを握るトンネル工事…地質変化に対応しやすい「山岳工法」を採用
今後もリスクが生じた場合、さらに数年単位で遅れる可能性がある札幌延伸。
軟弱な地盤に悩まされていた渡島トンネルでは、現在、地質の変化に対応しやすいとされる「山岳工法」が採用されています。
掘削した場所にコンクリートを吹き付けて固め、鉄の棒を打ち込むことで山と固定させます。
最近は地質の状況も変わり、掘削のスピードが改善傾向にあります。
(鉄道・運輸機構北斗建設事務所 鳥井宏之工事長)「これはかなり硬い岩石で、マグマが固まった岩で、閃緑岩といいます。もともと軟弱なところを掘っていたんですけど、状況としては良くなってきている。概ね4年程度遅れている。まだ掘っていないところがどのような地質になっているか、ボーリング調査を使いながら工程短縮を図っていきたい。現場としましては1日も早く開業完成ができるように、安全第一にできる限りのことをして早く進めるということで努力している」
開業までの工程は、土木工事、軌道・電気工事、監査・検査に分かれます。
2025年に入り、レールの輸送や溶接作業も始まっていて、鉄道・運輸機構はトンネルの貫通にめどがつく3年から5年後に開業見通しを精査する方針です。
しかし、避けられないのが事業費の膨張です。
鉄道・運輸機構は12月、最大で1.2兆円増える試算を公表し、沿線の自治体に説明しました。
(北斗市 池田達雄市長)「いままで以上に強く地元負担金の軽減を訴えていかなければいけない」
(長万部町 木幡正志町長)「財政負担だけはね、やっぱり痛いですよ。それをどう国が受け止めたり改善してくれるか、それは我々の願いでもあるし戦いでもある」
(札幌市 秋元克広市長)「開業遅れに伴う影響をできるだけ少なくする方策、もしくは更なる地方負担の増加にならないように強く求める」
国が3分の2、道と沿線の6市町が3分の1を支払う事業費。
鈴木知事は、地元負担の軽減を国に求める方針です。
(鈴木知事)「そもそも開業の時期が判然としないのがみんな不安。不安な中にさらにお金が増えるという情報がどーんと来ている。国としても地域の思いを受け止めていただいた中で、一緒になって解決しようという立場になってもらわないと受け止めきれない話」
利用者からは期待の声 再開発への影響は?JR「延伸にかかわらず完成させる」
マチづくりへの影響も懸念されています。
(宮崎記者)「札幌延伸を見据えて、新幹線札幌駅の工事が着々と進められています。さらにエスタを含むのあちらのエリアでは再開発が予定されています」
2023年に閉店した商業施設「エスタ」は解体が始まり、足場を覆うシートには「Welcome SAPPORO」や「THANK YOU」のメッセージが掲げられています。
新たに整備される再開発ビルについて、JR北海道は3月、工事費の高騰を理由に計画の見直しを発表。
ビル2棟の開業時期を2段階に分け、全面開業は2034年度になる予定です。
(JR北海道 綿貫泰之社長)「影響がゼロというわけではないが、新幹線の客以外に札幌市民や道民の皆さんにも札幌に来ていただいたときの利用を多く考えているので、新幹線の札幌延伸にかかわらず完成させていくことを考えている」
大幅に遅れることになった札幌延伸にマチの人はー
(マチの人)「今後便利になるだろうし、マチもきれいになるなら待ちたいと思います」
(マチの人)「交通の便が良くなって、観光客が増えて経済が回ればいいと思います」
(マチの人)「誰でも楽しめたらいいですよね。観光客だけとか札幌の人だけではなく、みんなが過ごしやすくなってくれたらいいと思います」
開業の時期さえ示されていない北海道新幹線の札幌延伸。
道民の期待に応えるためにも1日も早い開業が求められます。