最愛の父親を失った家族「絶対にありえない」5年前の死亡ひき逃げ 捜査難航の末、不起訴に…
2020年に北海道苫小牧市で60代の男性が死亡したひき逃げ事件で、検察は2025年、不起訴処分を決めました。
なぜ不起訴なのか、なぜ5年もかかったのか、納得できないと訴える遺族の思いを取材しました。
(浅野さんの娘)「申し訳ない気持ちでいっぱい。もっと良い報告をしに来たかったんですけど…」
やりきれない思いを語るのは、ひき逃げ事件で父親を亡くした娘です。
墓前に父親をはねた運転手が不起訴になったことを報告しました。
(浅野さんの娘)「母親が亡くなるのが早かったのもあって、父とはすごく仲が良くて」
父親の浅野豊さん、当時69歳。
定年後に念願だったイヌを飼い始めました。
事件は雨が降る夜に起きました。
2020年8月、愛犬のベルを散歩中に横断歩道のない道路を渡っていたところ、乗用車にはねられました。
全身を強く打ち、即死だったといいます。
第一発見者の男性は、当時のことを日記に記録していました。
(通報者)「ドンという音と、キャンとイヌの鳴き声が聞こえ、障子を開けるも車は見えない。外へ出てみると、雨が降っていて、傘とイヌが倒れているのが見え、車のライトで人が倒れているのが分かり110番した」
車を運転していた当時66歳の女性は、一度現場を立ち去ったあと、およそ10分後に戻ってきて、ひき逃げと過失運転致死の疑いで逮捕されました。
難航した捜査…運転手は5年後に不起訴処分「納得できない」
(運転手)「人をひいたとは思わなかった。飛び出してきたイヌとぶつかったとばかり思っていた」
女性は、当時から一貫して「イヌと衝突した。浅野さんには気がつかなかった」と主張しています。
ドライブレコーダーや防犯カメラがなく、目撃者もいない事件。
検察の捜査は難航しました。
事故から5年が経った2025年9月、検察は女性を嫌疑不十分で不起訴処分にしました。
(浅野さんの娘)「絶対にありえないと思っていたので、まさかという感じですね。最初に担当した検察の方からは、不起訴はまずないと聞いていたんですけど。それを信じてずっと待っていて 、全然納得はできていないです。誰が正しいのか本当にわからないですね」
天候の証言は本当か?なぜ不起訴処分になったのか
浅野さんは午後7時半ごろ、片側2車線の道路を渡りきる直前で車にはねられました。
当時の状況を運転手の女性はー
(運転手)「事故の時間ごろには、夕立のような暴風雨になっていました。ワイパーを最高速にして目一杯回していたのですが、見通しはかなり悪い状況でした」
一時的に雨が激しくなり、視界が悪かったと話しています。
しかし、現場から2キロほど離れたアメダスのデータを見ると、事件前後の午後7時20分から50分までの雨量は0ミリ。
当時は雨が激しくなかったことが伺えます。
元検察官の中野弁護士は、運転手が浅野さんに気付いていたかを検察が立証できなかったことが不起訴の理由だと指摘します。
(元検察官 中野雅文弁護士)「実際このパターンで不起訴はあまりないと思うんですよね。(運転手から浅野さんが)見えなかったかもしれないなという疑問が、どんな捜査をやっても疑いを排除できなかったということなのかなと思います。5年は私からすると長すぎる」
実況見分で服装再現されず…家族の抱く疑念“捜査は適切だったのか”
(鷲見記者)「事故から5年が経ち、検察が決定したのは不起訴という処分でした。浅野さんの家族は捜査の在り方に疑問を抱いています」
(浅野さんの娘)「事故当時、父はヘッドライトをつけて出かけていて そのことに関しても把握されていなくて。そんなずさんというか、知っていて当たり前だと思っていたことも何もわかってらっしゃないのかなって思って、ちょっとびっくりしました」
これは、家族が検察とのやり取りを記録したノートです。
「父の所持品の写真がピンボケしていて、ヘッドライトをつけていた事を分かっていなく写真提供する」と記載されています。
アウトドアが好きだった浅野さんは、散歩中にヘッドライトをつけていました。
さらに、当時はこの写真でも着ている明るい緑色の上着を身に付けていましたが、検察の実況見分は、黒い服を着て行われていたといいます。
(浅野さんの娘)「どうして再現しなかったのかは疑問ですね。ヘッドライトもつけていて、明るいグリーンのアウターを着ていると全然条件が変わってくると思うんですけど。それで不起訴と言われても、できることをちゃんとやってくれていないですよねと思ってしまいます」
元検察官の中野弁護士は、初動の捜査が明らかに不十分だったと指摘します。
(元検察官 中野雅文弁護士)「時間が経つにつれてやっぱり証拠ってなくなっていくので、最初になかなか人を投入して証拠の収集がうまくいかなかった可能性あるのかなと思いますね」
なぜ不起訴になったのか、なぜ5年もかかったのか。札幌地検に取材を申し込んだところ、「処分が決定した事件についてはお答えできることはない」と回答がありました。
最愛の父親を失い、この5年間、心に穴が開いたような日々を過ごしてきた家族。
捜査を託した分、裏切られた思いが募ります。
(浅野さんの娘)「最初に担当した検察の方が不起訴は絶対にないからと言っていたので、その言葉だけ信じてただ待っていたのに。“あと半年以内には”とか“あと1年以内には”と担当者が変わるたびにそういう説明を受けてきて、本当に何のための5年間だったんだろうという気持ちですね」