座席数は20席 夫婦二人三脚で営むマチの小さな映画館「当たり前にある場所に…」北海道東川町
北海道東川町に、夫婦二人三脚で営む小さな映画館がオープンしました。
座席数はわずか20席。
夫婦がミニシアターにかける思いに迫りました。
田園風景の中にある「ル・シネマキャトル」
赤いドアに吸い込まれるように入っていく人たち。
(客)「めちゃくちゃいいんですよ」
(客)「ブラボーって感じでした」
(客)「うんと宣伝してね」
訪れる人が絶賛するこの場所はー
(ル・シネマキャトル 齋藤裕樹さん)「上映を始めさせていただきます。ぜひお楽しみください」
オープンしたばかりの小さな映画館。
新たな物語が紡ぎ出されています。
大雪山国立公園の麓にある東川町。
豊かな水と自然があふれる人口およそ8700人のマチです。
マチの中心部から車で5分、田園風景の中に「ル・シネマキャトル」があります。
ミニシアターを運営するのは、齋藤裕樹さんと妻の富士子さんです。
(ル・シネマキャトル 齋藤裕樹さん)「こちらがシアターです」
(記者)「何人入れる?」
(ル・シネマキャトル 齋藤裕樹さん)「20名様お座りいただけます。ひとりひとりのスペースを広くとって、居心地の良さを感じていただくという形で20席にしました」
天井が高く広々とした空間。
木をふんだんに使い、家具のマチ・東川の魅力を伝えています。
裕樹さんは30年前、映画製作を学ぶためフランスに留学。
帰国後は映画配給会社に勤務するなど、大の映画好きです。
(ル・シネマキャトル 齋藤裕樹さん)「まず一番最初に自分が見たくてやり始めたんです。上映会を3年前から東川町で10回ほど開催して」
上映会には北見や稚内からも鑑賞に訪れる人がいて、手応えをつかんだといいます。
(ル・シネマキャトル 齋藤裕樹さん)「映画の夢をあきらめていたんですけれど、上映会や東川町で暮らすうちに、映画を仕事としてできないかという思いになりまして」
(妻・富士子さん)「大きく売り上げがなくても、きちんと生活さえできればいいというのがベースにあるので、その辺はすごく考えていたみたいなので信用していました」
2人は映画館を作るため、クラウドファンディングなどで資金を集め、自宅を改装して夢を実現させました。
上映する映画は月4本 オリジナリティあふれる作品が人気
上映する映画は月4本。
観客はまだ平均5~6人と苦戦していますが、経費を抑えて運営しています。
(ル・シネマキャトル 齋藤裕樹さん)「いまフィルムっていうのは実際なくて、ほとんど9割ぐらいですね、デジタル、パソコンで送られてきてそれを自動的に上映するというようなシステムなんですね。ただそれは1000万円かかって10年ごとに更新で1000万かかるんです。それはちょっと経営的に持続不可能で、僕らは業務用のブルーレイで上映して」
ブルーレイを活用し、経費を大幅に削減。
さらに、こんな工夫もー
(ル・シネマキャトル 齋藤裕樹さん)「ブザーがあるじゃないですか、これでやっているんですよ。こういうのはお客さんの夢を壊しちゃうかもしれない」
(カメラマン)「○じゃなくて×を押すんですね」
(ル・シネマキャトル 齋藤裕樹さん)「○を押すと…間違えないように。あるんですよね、機械が。35万ぐらいして。それ無理だ、2000円で」
上映する映画は2人が選んだオリジナリティあふれる作品で、お客さんの評判も上々です。
(旭川から来た人)「座り心地もいいし木の香りが館内からふわっと入って。お茶の香りといい気持ちで見られる映画館だなあ」
(東川から来た人)「すっごいうれしい。マイナーな映画で、彼と彼女が選んでくれた。素晴らしいと思う。そういうの見れないもん。取り上げてくれて大きくなったらもっともっとうれしい」
そんなミニシアターを町ぐるみで応援しています。
(道の駅ひがしかわ「道草館」 村上真美さん)「お預かりしたパンフレットやポスターを掲示して、みなさんに見てもらえる環境を作っています。道の駅としても『何時間あいているんだけど何かすることないかな』という問い合わせはけっこう受けるんです。そこに映画っていうコンテンツができたのはすごく素敵かなと思います」
応援の輪は札幌にも。
道内のミニシアターの草分けとして、30年以上にわたり個性豊かな作品を上映してきたシアターキノです。
代表と支配人を務める中島さん夫婦も、東川町の小さな映画館に期待を寄せています。
(シアターキノ 中島洋さん)「東川町であっても20席ですので、僕はすごい期待できるというふうに思いました。自分たちのできる範囲のところで考えたら絶対やったほうがいいと間違いなく思いました」
(シアターキノ 中島ひろみさん)「簡単に全てがうまくいくっていうわけではないから、試行錯誤の連続だとは思うんですけど、SOSがあったらいつでも言ってくださればアドバイスくらいだったらできるかなって」
“映画は人生のバラ” ミニシアターで体現
東川町の齋藤さん夫妻です。
6年前に札幌から移住し、同じ敷地で飲食店を営んでいます。
(ル・シネマキャトル 齋藤裕樹さん)「ありがたいことにある程度安定した。おかゆというニッチな、なかなか選ばない食事かと思うので、常連さんがたくさんついていただいて」
今のところ、映画館ではなく飲食店の経営が2人の生活を支えています。
映画館をもっと身近に感じてほしい。
2人はミニシアターにある思いを描いています。
(妻・富士子さん)「来てくださった方が楽しんで帰って、何気なくまた来てくれるっていう、当たり前にある場所になればいいなと思うんですけど」
(ル・シネマキャトル 齋藤裕樹さん)「僕の好きな監督にイギリスのケン・ローチっていう監督がいまして、その監督が『We want bread but roses too.』って言ったんですね。生きるにはパンが必要だけど、生活を彩るバラも必要だっていうこと。そういったことをミニシアターでは体現しているのかなとは思います」
映画は人生のバラ。
訪れる人の暮らしをより豊かにするために、小さな映画館の挑戦が始まっています。