Dr.トーコのラジオ診療室

6月14日「透析患者さんが”しっかり食べる”とはどういうことか」

2020年6月14日(日)

6月14日「透析患者さんが”しっかり食べる”とはどういうことか」

  • 橋本さん、陶子先生
陶:ドクターから「しっかりと食べて太ってね」と言われても、体重が気になって食べられない患者さんが多くいます。ドクターやスタッフから「しっかり食べてね」と言われたときの食事のとり方や、どうしてしっかりと食事をとらなければいけないのか等、なかなか分かりにくいことを、H・N・メディック北広島の「結果を出す」管理栄養士、橋本真里子さんに先週に続きお話し頂きます。
橋:おはようございます。今週もよろしくお願いします。
山:よろしくお願いします。
橋:先週は体重の増え過ぎといった体重管理、主に塩分と水分の関係についてお話しましたが、今回は「しっかり食べる」という透析患者さんに大切な食事のとり方についてお話ししたいと思います。透析患者さんは体重が増え過ぎて管理が悪いと、先生やスタッフに注意されてしまいますが、逆に食べなさ過ぎても「しっかり食べてね」と指導されることがあります。体重が増え過ぎてはダメ、と頭の隅にありますので急にスタッフから「しっかり食べてね」と言われて困ってしまう方が多くいらっしゃいます。その時に思い出して欲しいのは、「塩分に気をつけてご飯を食べるのだよ」ということで、これについては先週お話しさせて頂きました。
陶:塩分をとり過ぎると体重が増え過ぎる、ということを先週ご紹介しましたが、どうやったら自分の体の身になるものを増やすことができるのかを、今日はお話しして頂きます。
橋:先生やスタッフに「しっかり食べて」と言われると、患者さんなりに考えて食べてはみるものの、先生やスタッフが説明した「しっかり食べる」というイメージとは違って、食事量プラス飲水量も増えてしまうという体重の増え方をしてしまう患者さんもいます。また「しっかりと食べて」というアドバイスをもらったので、口当たりの良い果物を普段よりも多く食べたり、食べやすい麺類を普段よりも多く食べる患者さんも中にはいます。果物は80~90%が水分であるため、例えば果物を100gほど食べたとすると、水を80~90g飲んでしまったことと同じになってしまいます。麺類であっても、汁を飲んでいなくても麺が水分を吸ってしまっているので、こちらも余分な水分をとってしまっていることと同じになってしまいます。何故先生が「しっかりと食べて」と言うのかというと、必要な分のエネルギーやたんぱく質を取っていないと、患者さんの身体が痩せてきてしまうからなのです。身体が痩せてきてしまうと、「塩分・水分管理」をしっかりと行っていても、どうしても身体に水分が残っている状態になってしまいます。水分が身体に残っている状態になると血圧が高くなったり、ひどくなると心臓や肺に負担がかかってしまい、さらに体重管理がしづらい状態になります。透析患者さんは、短期間のうちに(例えば4月に体重が50kgだった方が5月に48kgになるというように)体重減少率が大きいと、生命予後(簡単にいうと寿命みたいなもの)にもあまり良くないと言われています。
陶:「食事の量が減ること」のイメージは、極端にいえば「食べないで生きていく」ということです。生きるためには何らかのエネルギーが必要になるため、自分の血肉を薪のようにくべて燃やしていくような状態に陥るのです。そうすると薪にくべた肉の分だけ体重は減ってきてしまいます。今持っている自分の体を燃やさないで欲しいので、どうか「外から食べることでエネルギーを燃やす薪を仕入れて欲しい!」というのが、「しっかり食べて」ということなのです。
橋:先生やスタッフが考える「しっかりと食べる」食事は具体的にどういったものなのかというと、自分自身の血肉になるような食事をとるということです。
山:水分ではなくて、血肉になる食事ですか?
橋:そうです。透析食の基本は白米をしっかりと食べ、肉や魚の目安量をしっかりと守り食べることといつも説明しています。白米は塩分を含まず、しっかりとエネルギーがとれる透析食の味方です。また肉や魚類は良質なたんぱく質をとれる食品です。しかし食べすぎてしまうと、透析患者さんの気にしている血清リン値は上昇してしまうため、あくまで目安量をしっかりと守って食べることが大切です。
陶:リンの値については、それぞれどういう食べ物にどれぐらいリンが含まれているかという目安があるのでそれを記憶していくことも大事です。なかなか記憶することが難しい場合は、栄養士に聞くと何にどれぐらいリンが入っているかを教えてくれるので聞いてみることも大切です。
橋:これまでお話しした食事内容はあくまでも透析食の基本なのですが、先生たちに「痩せてきているよ。しっかりと食べてね。」と言われる患者さんの多くは食欲がなく、食べられなくて困っている方がいらっしゃいます。そういった患者さんは、一人では悩まずに栄養士やスタッフに相談を一度してみることが大切です。ここで覚えていて欲しいのは、先ほどお話しした白米と肉・魚類といった食事はあくまでも基本として欲しい食事内容であって、絶対に正しいということでは無いことです。様々な患者さんがいらっしゃいますので、個人個人にあった患者さんの人数だけ、食事の内容の種類があります。例えばお手本のような食事内容をスタッフ側が説明したとしても、患者さん自身が実際に食べられる、実践できるような内容を指導しないと全く意味がなくなってしまいます。そういったことを防ぐためにも普段から栄養士やスタッフに相談することがとても大切になってきます。
陶:「どうしたらいい?先生」、「どうしたらいい?栄養士さん」というように聞いてください。そうすればなんとかして一人一人に合わせた方法を見つけていきます。
橋:先生やスタッフに「痩せてきているよ。しっかりと食べて」と言われた患者さんは、塩分に注意しながら、透析食の基本である白いご飯と肉や魚類を組み合わせて食べてみるといいと思います。もし何を食べてよいか困った時は気軽にスタッフに相談してみてください。「食欲が無いけれどこれなら食べられる」といった食材や料理がある時は、質問してもらえればその患者さん自身にあった目安量や食べ方を伝えることができます。当院には調理のプロの調理師達が多くいるので、その食材や料理をより美味しく食べられるようなアドバイスも一緒にできます。患者さん自身も食べることについての疑問があった時は、調理師や栄養士に気軽に声をかけてください。
陶:橋本さんはとても具体的な指導をしてくれる栄養士です。どうしたらいいのか、ということに対して、色々な方法の引出しを持って仕事をしてくれています。
山:毎日の大切な食事について、橋本さんのような方に相談することで、広い道が開けていくのですね。先週、今週とH・N・メディックの管理栄養士、橋本真里子さんにお話を伺いました。どうもありがとうございました。
橋:ありがとうございました。
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