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【オホーツク海側の津波】流氷で被害拡大?10メートル級の想定も

オホーツク海側で起こる津波には一体どんな特性があるのでしょうか。

3万人が暮らす北海道網走市です。

ことし2月、ある数字がこのマチに伝えられました。

それがー

「最大津波13分で到達」

道がオホーツク海側の津波による浸水想定を公表し、各自治体に到達する津波の最大の高さと地震発生からの時間が明らかになったのです。

市の担当者も危機感を募らせています。

(網走市総務防災課 八百坂則勝参事)「新たに示された13分というのは非常に時間が短いと感じています」

さらに、マチを代表する観光資源にもなっている冬の流氷が、リスクをより大きくさせているといいます。

中央大学の有川研究室で先月、流氷の混じった津波を再現し、氷の塊が与える影響を調べる初めての実験が行われました。

流氷は建物に見立てた木箱に音を立てながらぶつかり、その一部はさらに内陸の方まで到達しました。

(中央大学理工学部 有川太郎教授)「流氷が重なり合うことでより高いところまで影響が及ぶことが考えられます。あとは流氷そのものが水の塊なので、その重さが一気に来て局所的に物が破壊されやすくなる」

網走市内ではいたるところで冬の災害への備えが進められています。

海に面した海岸町地区では、避難階段がいつでも安全に使えるように、町内会で除雪を徹底しているといいます。

(海岸町町内会 菊地正彦会長)「こればかりは命の問題が関わるので、常にきれいにするということで見回りもしながら除雪しています」

この地区では避難訓練も定期的に行っていて、冬の時期の実施も検討しているということです。

さらに日中の太陽光で蓄電し、夜の間階段を明るく照らすLED照明の設備も整えました。

ほかにも市内各地の避難所にはー

(網走市総務防災課 八百坂則勝参事)「段ボールベッド・ポータブルストーブ・備蓄用の毛布を冬季の対策用として備蓄しています」

寒い時期でも避難先で安全に過ごせるよう備えが進められています。

一方、オホーツク海側の浸水想定で最も高い10メートルの津波が予想されている雄武町。

海岸線がおよそ30キロと長く漁業のマチとあって、沿岸部に住む町民が人口の2割以上を占めます。

町の防災担当者はあることを懸念していました。

(雄武町住民生活課 中村文隆課長)「災害の経験が少ないので町民の防災に対する意識ははっきり言って低いと思っています」

マチで話を聞いてもー

(雄武町民)「災害はないわ。なんも来ないよ、雄武は穏やかなところだよ」

こうしたなかでも、海沿いに暮らす人がいざという時に避難できるよう、町は対応を進めています。

(根本記者)「雄武町元沢木地区です。民家が立ち並ぶこの通りは、もともとここで通行止めになっていました。その後、住民らの声を受けて少しでも早く避難できるように、高い場所へある国道に続く、この新しい道の建設に町が乗り出しました」

海と並行に沿って伸び、行き止まりになっていた町道。

ここに内陸方面へつながる道を新たにおよそ350メートル整備することにより、一刻も早く海から離れられるようにする狙いがあります。

この通り沿いに住む人も来年7月の道路の完成を待ちわびています。

(付近の住民)「ここは迂回路がなく突き当りだから、災害のときは非常に助かると思います」

さらに町は自主防災組織の育成にも力を入れています。

(雄武町沢木自治会 加賀雅司会長)「高齢者が多くなってきているので、その人たちをどのようにして速やかに避難させるかということを考えなければならない。話し合いや訓練をしていきたい」

説明会などを重ね、これまでに4分の1の自治会に自主防災組織が発足したということです。

専門家は、地形など地域の特性を踏まえた対策が欠かせないと指摘します。

(北海道大学 高橋浩晃教授)「オホーツク海側は特に国道が海に平行に走っていて内陸に向かう道が少ない。現在避難することが難しい地域においては、新しい避難路の確保・建設を視野に入れても良い」

災害が少なかった歴史に油断せず、突然訪れる「いざというとき」のために日頃から備えを進めておくことが大切です。

(2023年12月7日放送)
「STVニュース」  1/5(金)14:25更新

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