ニュース

NEWS

“冬の津波”に備える…過去の記憶と教訓

東日本大震災では、道内にも津波が押し寄せ、住宅が浸水するなどの被害が出ました。
実は、それよりも大きな津波被害が過去に道東地方で起きていました。
忘れてはならない70年前の記憶です。

道東の厚岸町に住む遠藤弘子さんです。

(遠藤弘子さん)「この海が上がるんですもの。ぐーっと上がって。すぐ来るんだよ。70年経ったというけどね。ほんともうこんな恐ろしい思い二度と経験したくない」

70年前に襲った津波が今でも目に焼き付いています。
1952年3月4日に発生した十勝沖地震。厚岸町には、高さ6メートルを超える津波が押し寄せました。
震源は、襟裳岬・東方沖の千島海溝沿いでマグニチュードは8.2、最大震度は6を観測。
津波で家屋や建物などが倒壊し死者・行方不明者は、33人に上りました。
取材した日は、70年前と同じ3月4日。弘子さんは当時、小学校で授業を受けていたといいます。

(遠藤弘子さん)「突然2時間目の授業が始まると同時に大きい地震が来たんです。浜のお母さんが津波来るから逃げて!っていう声が聞こえた。泣きながら走って山の方へ避難したんですよ」

夫の弘さんの自宅は、津波で流されたといいます。

(遠藤弘さん)「これはね、うちはこの下になったからみんな流されちゃったの」
(遠藤弘子さん)「これが友達と私と父親がここにいて倉庫が流されたから倉庫のものを拾ってここに集めていた様子ですね」

最大震度6を記録した十勝の浦幌町です。地震による強い揺れで甚大な被害が出ました。

(浦幌町立博物館 持田誠学芸員)「町内ではおよそ2200戸の家屋が全壊半壊含めて被害がありまして、130人以上の方が重軽傷を負いました。国鉄の線路で列車の脱線転覆事故があって、通信交通網が遮断されてしばらくの間孤立するといった厳しい状況に置かれていた」

地震のおよそ2週間前に生まれた佐藤芳雄さんです。
父親が旧国鉄職員で、線路や車両の復旧工事に当たったといいます。

(佐藤芳雄さん)「このあたりで貨物列車が転覆したらしいんですよ。線路がぐにゃぐにゃになってしまって雪の中に突き刺さったり、荷物がそこら中に飛び散ったりして大変だったらしいです」

道東地方を襲った十勝沖地震。中でも大きな被害が出たのが浜中町です。
写真の中央に横たわる白い塊。津波とともに打ち上げられた流氷です。
大きいもので長さ5メートル、厚さ1.3メートルにも及び、住宅などを次々となぎ倒していきました。
およそ60戸が全壊し、3人が犠牲となりました。
いわゆる「流氷津波」の脅威に専門家は警鐘を鳴らします。

(北海道大学地震火山研究観測センター 高橋浩晃教授)「津波が起こったときに流氷があると、破壊力が増えるんです。流氷がないときに比べて被害がどうしても大きくなってしまう」

これは、津波とともに流氷が押し寄せた時の実験映像です。
水が、模型の氷にせき止められてどんどん高さを増していきます。
氷も一気に積み重なっていくことから、普段以上に高いところへ避難する必要があるといいます。

11年前の東日本大震災でも流氷を伴った津波が根室市などで確認されました。
もう少し時期が早ければより多くの流氷で被害がさらに大きくなった可能性があります。
浜中町では、津波に備えて、去年、役場の庁舎を高台に移転しました。

(浜中町役場防災対策室 石塚豊室長)「防災において機能を発揮するべき役場庁舎を高台に移転した。旧庁舎の時代は海抜3メートル程度でしたが、現在は42メートルの高さに庁舎がある」

新庁舎は、免震構造となっていて、地震による建物の揺れを軽減するようにできています。

(北海道大学地震火山研究観測センター 高橋浩晃教授)「(70年前の地震は)まさに千島海溝でおこった巨大地震のひとつと考えています。北海道の太平洋沿岸部では巨大地震がいつ起こってもおかしくない状態。切迫性が非常に高いと考えられています」

70年前の津波を目にした遠藤弘子さん。一刻も早い高台避難を心に決めています。

(遠藤弘子さん)「とにかく何かあったら私は逃げることが一番だと思いますよ。這ってでもなんでもいいから山に避難するとか、ちょっとでも高いところに避難した方が良いんでないかね。忘れてはいけないよね。戦争と同じだよね」

いつおきてもおかしくない千島海溝沿いでの巨大地震。今なお残る過去の記憶と記録が防災への道しるべとなります。

★スタジオ)
千島海溝や日本海溝で真冬の深夜に巨大地震が発生した場合、20メートルを超える津波が予想され、最悪の場合、道内でおよそ13万7000人が死亡すると想定されています。

冬に大きな地震が起きたら、まずは津波の情報が出たら高いところに速やかに避難しできるだけ厚着する。緊急時に持ち出すバッグにカイロをたくさんいれておくなど、日頃の備えが大切です。

(2022年3月11日放送) 
「どさんこワイド179」  2/9(木)12:46更新

北海道