【命を守る】「後発地震注意情報」どんな情報?
強い地震が起きたあと、それを上回る強さの地震が起きることがある。
このような注意を呼び掛ける「後発地震注意情報」の運用が始まりました。
どのような情報で、私たちはどう対応したらよいのか。
防災や減災について考えるシリーズ「命を守る」。今回は、巨大地震への備えについて考えます。
これは道や地元の自治体が公開した、津波被害のシミュレーション動画です。
日本海溝や千島海溝で地震が起きた場合、全道で最悪、15万人近くが死亡すると推定されています。
これまでの災害を分析したところ、大きな地震から間をおかずに、さらに、大きな地震が発生した事例があることから、国はこうした「後発地震」への注意を事前に呼びかけるため、「北海道・三陸沖 後発地震注意情報」の運用をきょうから始めました。
「後発地震注意情報」は北海道から岩手県にかけての地域で、マグニチュード7以上の地震がおきた場合に、発生から2時間後をめどに、注意情報が出される予定です。
北海道で対象となるのは釧路市や根室市など、太平洋沿岸を中心とした63の市町村で、1週間にわたって、さらなる地震への備えが呼びかけられますが、事前の避難は求めません。
(谷防災担当相)「関係住民の適切な防災対応につながるよう、引き続き周知に努めるとともに、気象庁と関係自治体としっかり連携しながら、取り組んでまいります」
(釧路市民)「ありがたいですよね、そうなると用意しなきゃとか心構えができるので」「注意が出たとしても普通に仕事にも行くしあまり気にしないかもしれない」
(釧路市防災危機管理課・佐々木和史防災危機管理監)「ホームページとか、LINEとかメールを使って市民の方に周知していくことになる」
事前に注意を呼び掛ける必要性があるのか。
実は、この情報が出されていたら結果が違ったかもしれない、そんな地震があります。
多数の死者・行方不明者を出した2011年3月11日の「東日本大震災」です。
実は、2日前の3月9日。三陸沖で起きていたのがマグニチュード7.3の地震。
宮城県栗原市などで、最大震度5弱を観測しました。
もし、このとき「後発地震注意情報」の仕組みがあったとしたら、情報が出されていたとみられています。
(札幌管区気象台・長谷川洋平地震津波防災官)「1人でもその犠牲になるようなことがないようにということで創設された」「地震への備えを再確認していただき、すぐに、避難できるような体制をとっていただく」
鈴木北海道知事もきのうの定例会見で道民に広く伝えていくと話しました。
(鈴木知事)「防災関係機関と連携・協力してイベントや研修会を活用して、広く道民にお知らせする」
きょうから始まった「後発地震注意情報」。
情報の発表から1週間程度は速やかな避難の準備など、地震への備えが呼びかけられます。
後発地震注意情報とは…
・マグニチュード7以上で発表
・震度6弱以上か津波3m以上
・100回に1回程度の頻度
・避難を呼びかけるものではない
・63の市町村が対象
・オホーツクの雄武町と枝幸町も→地形的に津波が高くなる可能性
・中身紹介
・注意情報発表時には再確認を
こうした情報が発表されるようになっても、いざというときに、実効性のある行動へとつなげられるのでしょうか。ここには多くの課題もあるといいます。
千島海溝による巨大地震のリスクが高まるなか、沿岸部の自治体を取材しました。
人口およそ7300人。北海道の東の白糠町です。
マチの中心部から、海に続く南北の道が多く、最悪の場合、町民の7割にあたるおよそ5000人が死亡すると推定されています。このマチで、先週ある訓練が初めて実施されました。
家の壁には「最初の5分が勝負」という真っ赤な文字が。
町内の海岸付近に住む千田政一さん・72歳です。
(千田政一さん)「5分以内に外に出るようにと」
実は、今回おこなわれたのは避難場所に向かうのではなく、警報が発表されてから家の外に出るまでの時間を確認するという訓練。
人の歩く速さは簡単に変えられないことから、避難を始めるまでの時間を少しでも短かくしようというのが目的です。
千田さんの自宅があるのは「西浜1区」と呼ばれる海に面した地域。津波のリスクは常に考えているといいます。
(千田政一さん)「海岸線から100メートルくらいのところが私の家、地震で津波が来た時に一番最初に被害にあう場所だと思う」
(根本記者)「千田さんは何分くらいを目指しますか?」
(千田政一さん)「予想ではとりあえず3分くらいかな、3分くらいでは出たい」
訓練前日、非常持ち出し品の場所や中身を確認しながら「3分で家を出たい」と話していた千田さん。
果たして3分で家を出ることができたのでしょうか。
(サイレンの音)町内の全世帯に配られた、防災ラジオから警報が流れ始めました。
(防災ラジオ)「くんれん、くんれん」
千田さんは、まず、ストーブの火を消して…寒さに備えて服を着替えます。
そして、ライフジャケットを身に着けて、ブレーカーを落として、防災ラジオを首にかけいよいよ外に出ようとします。するとそのとき。
(防災ラジオ)「訓練開始から5分経過」
玄関にいるうちに町が目標とする「5分」をすぎてしまいました。
(千田政一さん)「ちょっと…5分以内にいけると思ったんですけど、できなかったですね」「案外5分って短い時間ですね、びっくりしました」
訓練には、近くの住人も参加し家の外に出て互いに声をかけあっていました。
こちらはとなりの町内会に住む男性。
自宅に案内してもらうと…やはり玄関には、非常持ち出し品が豊富に取り揃えられていました。しかし…
(訓練に参加した人)「持って歩けないでしょ」「電池とか水くらいなら、何とか持って逃げられるかもしれないけど、全部は無理」「人がだれか助けてくれると思っても、そんなにたくさんいるわけじゃないし」
いざというとき、すぐに対応するためには多くの課題があるといいます。
(白糠町地域防災課・菊原秀雄課長)「今回外に出られなかった方や、時間のかかった方が町内会の人たちも意識できるということ」「自助にあわせて共助の取り組みの仕方も、改めて考えてもらえる機会」
一方、千島海溝による地震が起きた場合、道内最多の死者数が想定される北海道・釧路市です。
なかでも避難困難地域とされているのが、ここ、大楽毛地区です。
(根本記者)「海が間近に迫っていることが分かるんですが、それでもなお、津波の避難場所が整備されていないということで、住民からは不安の声が聞かれました」
(大楽毛地区住民)「近くにすぐ避難できる高い建物が欲しい」「1日でも早く、避難場所の建設を進めてほしい」
実際、どのような避難になるのか。避難場所に向かってみました。
(根本記者)「砂利道を歩いてたどり着いたのがここ。40段以上の階段となっていて、高齢者などには、さらなるハードルになりそう」
(釧路市防災危機管理課・佐々木和史防災危機管理監)「まずは既存施設への対処」「例えば小学校の屋上」「安全対策のためのフェンスを張るとか、外階段をつけるとか」「それと実際に逃げる場所がないところでは、複合型の避難所機能を備えた施設を検討しているところ」
また、市では津波対策にかかる費用の3分の2を国が負担する「改正特別措置法」を活用し、防災対策を進めていく考えです。
一方、自力での避難が難しい高齢者や障がい者などを介護する人からは、事前の避難を求める声も聞かれます。
(NPO法人CCL・杉元重治理事長)「何かが起こってから逃げるというのは、現実問題としてかなり難しい」「避難所を設けませんというのは、市民に対する責任を取らないことになるのではないか」
さらに、別の沿岸自治体の防災担当者からはこんな声も聞かれます。
「避難所を設置するわけでもなく、防災無線で呼びかけるくらいしかできることがない」「自治体間を移動して生活する人もいる、道がもっとリーダーシップをとるべきだ」
(北海道大学・高橋教授)「津波の避難は自治体ごと、そして集落ごとに最適な方法が変わる」「ですから各自治体は地域住民の意見を聞いて、最適な避難方法を考えたうえで、確実に逃げられる場所の確保を進めてほしい」
新たに始まった命を守るための情報発信。この情報を最大限生かすための準備には課題も残っています。
(2022年12月16日放送)
このような注意を呼び掛ける「後発地震注意情報」の運用が始まりました。
どのような情報で、私たちはどう対応したらよいのか。
防災や減災について考えるシリーズ「命を守る」。今回は、巨大地震への備えについて考えます。
これは道や地元の自治体が公開した、津波被害のシミュレーション動画です。
日本海溝や千島海溝で地震が起きた場合、全道で最悪、15万人近くが死亡すると推定されています。
これまでの災害を分析したところ、大きな地震から間をおかずに、さらに、大きな地震が発生した事例があることから、国はこうした「後発地震」への注意を事前に呼びかけるため、「北海道・三陸沖 後発地震注意情報」の運用をきょうから始めました。
「後発地震注意情報」は北海道から岩手県にかけての地域で、マグニチュード7以上の地震がおきた場合に、発生から2時間後をめどに、注意情報が出される予定です。
北海道で対象となるのは釧路市や根室市など、太平洋沿岸を中心とした63の市町村で、1週間にわたって、さらなる地震への備えが呼びかけられますが、事前の避難は求めません。
(谷防災担当相)「関係住民の適切な防災対応につながるよう、引き続き周知に努めるとともに、気象庁と関係自治体としっかり連携しながら、取り組んでまいります」
(釧路市民)「ありがたいですよね、そうなると用意しなきゃとか心構えができるので」「注意が出たとしても普通に仕事にも行くしあまり気にしないかもしれない」
(釧路市防災危機管理課・佐々木和史防災危機管理監)「ホームページとか、LINEとかメールを使って市民の方に周知していくことになる」
事前に注意を呼び掛ける必要性があるのか。
実は、この情報が出されていたら結果が違ったかもしれない、そんな地震があります。
多数の死者・行方不明者を出した2011年3月11日の「東日本大震災」です。
実は、2日前の3月9日。三陸沖で起きていたのがマグニチュード7.3の地震。
宮城県栗原市などで、最大震度5弱を観測しました。
もし、このとき「後発地震注意情報」の仕組みがあったとしたら、情報が出されていたとみられています。
(札幌管区気象台・長谷川洋平地震津波防災官)「1人でもその犠牲になるようなことがないようにということで創設された」「地震への備えを再確認していただき、すぐに、避難できるような体制をとっていただく」
鈴木北海道知事もきのうの定例会見で道民に広く伝えていくと話しました。
(鈴木知事)「防災関係機関と連携・協力してイベントや研修会を活用して、広く道民にお知らせする」
きょうから始まった「後発地震注意情報」。
情報の発表から1週間程度は速やかな避難の準備など、地震への備えが呼びかけられます。
後発地震注意情報とは…
・マグニチュード7以上で発表
・震度6弱以上か津波3m以上
・100回に1回程度の頻度
・避難を呼びかけるものではない
・63の市町村が対象
・オホーツクの雄武町と枝幸町も→地形的に津波が高くなる可能性
・中身紹介
・注意情報発表時には再確認を
こうした情報が発表されるようになっても、いざというときに、実効性のある行動へとつなげられるのでしょうか。ここには多くの課題もあるといいます。
千島海溝による巨大地震のリスクが高まるなか、沿岸部の自治体を取材しました。
人口およそ7300人。北海道の東の白糠町です。
マチの中心部から、海に続く南北の道が多く、最悪の場合、町民の7割にあたるおよそ5000人が死亡すると推定されています。このマチで、先週ある訓練が初めて実施されました。
家の壁には「最初の5分が勝負」という真っ赤な文字が。
町内の海岸付近に住む千田政一さん・72歳です。
(千田政一さん)「5分以内に外に出るようにと」
実は、今回おこなわれたのは避難場所に向かうのではなく、警報が発表されてから家の外に出るまでの時間を確認するという訓練。
人の歩く速さは簡単に変えられないことから、避難を始めるまでの時間を少しでも短かくしようというのが目的です。
千田さんの自宅があるのは「西浜1区」と呼ばれる海に面した地域。津波のリスクは常に考えているといいます。
(千田政一さん)「海岸線から100メートルくらいのところが私の家、地震で津波が来た時に一番最初に被害にあう場所だと思う」
(根本記者)「千田さんは何分くらいを目指しますか?」
(千田政一さん)「予想ではとりあえず3分くらいかな、3分くらいでは出たい」
訓練前日、非常持ち出し品の場所や中身を確認しながら「3分で家を出たい」と話していた千田さん。
果たして3分で家を出ることができたのでしょうか。
(サイレンの音)町内の全世帯に配られた、防災ラジオから警報が流れ始めました。
(防災ラジオ)「くんれん、くんれん」
千田さんは、まず、ストーブの火を消して…寒さに備えて服を着替えます。
そして、ライフジャケットを身に着けて、ブレーカーを落として、防災ラジオを首にかけいよいよ外に出ようとします。するとそのとき。
(防災ラジオ)「訓練開始から5分経過」
玄関にいるうちに町が目標とする「5分」をすぎてしまいました。
(千田政一さん)「ちょっと…5分以内にいけると思ったんですけど、できなかったですね」「案外5分って短い時間ですね、びっくりしました」
訓練には、近くの住人も参加し家の外に出て互いに声をかけあっていました。
こちらはとなりの町内会に住む男性。
自宅に案内してもらうと…やはり玄関には、非常持ち出し品が豊富に取り揃えられていました。しかし…
(訓練に参加した人)「持って歩けないでしょ」「電池とか水くらいなら、何とか持って逃げられるかもしれないけど、全部は無理」「人がだれか助けてくれると思っても、そんなにたくさんいるわけじゃないし」
いざというとき、すぐに対応するためには多くの課題があるといいます。
(白糠町地域防災課・菊原秀雄課長)「今回外に出られなかった方や、時間のかかった方が町内会の人たちも意識できるということ」「自助にあわせて共助の取り組みの仕方も、改めて考えてもらえる機会」
一方、千島海溝による地震が起きた場合、道内最多の死者数が想定される北海道・釧路市です。
なかでも避難困難地域とされているのが、ここ、大楽毛地区です。
(根本記者)「海が間近に迫っていることが分かるんですが、それでもなお、津波の避難場所が整備されていないということで、住民からは不安の声が聞かれました」
(大楽毛地区住民)「近くにすぐ避難できる高い建物が欲しい」「1日でも早く、避難場所の建設を進めてほしい」
実際、どのような避難になるのか。避難場所に向かってみました。
(根本記者)「砂利道を歩いてたどり着いたのがここ。40段以上の階段となっていて、高齢者などには、さらなるハードルになりそう」
(釧路市防災危機管理課・佐々木和史防災危機管理監)「まずは既存施設への対処」「例えば小学校の屋上」「安全対策のためのフェンスを張るとか、外階段をつけるとか」「それと実際に逃げる場所がないところでは、複合型の避難所機能を備えた施設を検討しているところ」
また、市では津波対策にかかる費用の3分の2を国が負担する「改正特別措置法」を活用し、防災対策を進めていく考えです。
一方、自力での避難が難しい高齢者や障がい者などを介護する人からは、事前の避難を求める声も聞かれます。
(NPO法人CCL・杉元重治理事長)「何かが起こってから逃げるというのは、現実問題としてかなり難しい」「避難所を設けませんというのは、市民に対する責任を取らないことになるのではないか」
さらに、別の沿岸自治体の防災担当者からはこんな声も聞かれます。
「避難所を設置するわけでもなく、防災無線で呼びかけるくらいしかできることがない」「自治体間を移動して生活する人もいる、道がもっとリーダーシップをとるべきだ」
(北海道大学・高橋教授)「津波の避難は自治体ごと、そして集落ごとに最適な方法が変わる」「ですから各自治体は地域住民の意見を聞いて、最適な避難方法を考えたうえで、確実に逃げられる場所の確保を進めてほしい」
新たに始まった命を守るための情報発信。この情報を最大限生かすための準備には課題も残っています。
(2022年12月16日放送)
「どさんこワイド179」
2/9(木)12:54更新