Dr.トーコのラジオ診療室

4月25日放送「H・N・メディックでの臨床工学技士の仕事とは?」

2021年4月25日(日)

4月25日放送「H・N・メディックでの臨床工学技士の仕事とは?」

  • 陶子先生&山本さん&内海さん
陶:今週も先週に引き続き、H・N・メディックの臨床工学技士で、医療技術部の内海芳淳部長をゲストにお招きしてお送りします。内海部長、よろしくお願いします。
内:よろしくお願いします。
山:よろしくお願いします。内海さん、先週は初めてのラジオ出演ということだったんですが、いかがでしたか?
内:緊張して・・・口がどんどん乾いていって(笑)
陶:またまたー(笑)。私としては先週の放送で、どうして臨床工学技士を志したんですか?という質問に対する回答が特に面白かったですね。医療機器に限らず、いろんな物事のしくみを理解してそれをメンテナンスしながら患者さんのもとに届けるというところに生きがいを感じているように私は受け取りました。現代の発達した医療を支える生命維持管理装置のスペシャリスト、というのが臨床工学技士のお仕事全般ということでお話してもらったわけですけれども。
山:そうですね。先週はお人柄から臨床工学技士のいろはのい、を教えて頂きましたね。それでは今日は、さらなる臨床工学技士の世界を紐解いていきましょう!今日のテーマは?
陶:H・N・メディックでの臨床工学技士の仕事とは?というお話をしてもらいます。
山:H・N・メディックでの臨床工学技士の仕事ですね。内海さん、よろしくお願いします。
内:H・N・メディックで主に臨床工学技士が従事している仕事が、血液浄化業務になります。多くの臨床工学技士も血液浄化業務の仕事をしています。
山:血液を浄化する、きれいにする、というお仕事ですね?
内:はい、そうです。血液浄化とは、「急性および慢性腎不全の患者さんの人工透析療法、特殊療法として持続緩徐式血液浄化療法、血漿成分領域における免疫吸着療法や血漿交換療法など」を血液浄化といいます。
山:えー、さあ・・・いきなり難しくなってきましたね・・・
陶:(笑)難しい言葉は忘れて結構なんですけど、要するに、何らかの原因で身体の中で腎臓がダメになってしまうと毒素を身体の外に出すことができなくなってしまう。すなわち、血液の中に毒素が溜まってしまう。この溜まった毒素を浄化する、きれいにする、身体の外に出す、ということを機械でやってあげましょう。そうすることで生きていける状態に保つことができますよ、ということです。そのほかの血液をきれいにする技術も網羅するかたちで内海さんは今、いろいろな例を挙げてくれた、というわけですね。では内海さん、H・N・メディックでメインとして行っているのは?
内:このうち、メインとして行うのは慢性腎不全患者さんの血液透析を行っています。必要であれば、吸着療法や、血漿交換療法を行うこともあります。
陶:ときどき、重篤な患者さんがいらっしゃったときにはこうしたことも行っている、ということですね。
内:これらのセットアップから装置の操作、穿刺、治療中の観察、資材及び医療機器の保守管理まで行っています。
山:先週も思いましたけど、人工透析を行う病院では、本当に欠かせないお仕事ですよ。透析を司るマスターみたいな感じですね。
陶:要するに、透析そのものにまつわる仕事の全部をカバーしているんですよね。では、内海さん、もう少し深く具体的にお話してもらえますか?
内:具体的に言うと、仕事は臨床分野と工学分野に分けることができます。
  臨床分野では、
  ・透析に使用する物品の準備や透析機器の立ち上げ
  ・穿刺
  ・治療中の患者さんのケアや指導
  ・返血
  ・バスキュラーアクセス治療の介助(シャント手術の介助、シャントPTAの介助)
  ・透析条件の助言(先生への進言~透析方法やダイアライザーの選択など)
こうしたことを行っています。
陶:この「透析条件の助言・進言」ってさらっと仰いましたけど、もうこれ、教えてください!というレベルです。分野によっては、私達よりも臨床工学技士さんのほうが理論的なことを深く理解していることは多いんです。患者さんの診療していくうえで、何が最も適切かということなどについて、私達は医師としてリーダーシップをとりながら考えなければなりません。そうしたときに、私達が考えるための情報、材料というものは実は臨床工学技士である内海さんたちの頭の中、知識や経験に頼ることも多分にあるんです。会話として医師が「こういう場合にはどういう方法がある?」ときくと、技師さんが「こういうものがあります」と提示くださって、「じゃあ、どうやって選択して活用していく?」といったような相談が私達の間でなされるというわけです。
内:そうですね。そして、工学分野では、
  ・透析に使用する機器の点検、メンテナンス
  ・透析液の濃度管理、水質管理
  ・補助的に使用している輸液ポンプやシリンジポンプの管理、メンテナンスというようなことになります。
山:・・・全部だ!
陶:そうなんです。「メンテナンス」といえば維持管理していくことにはなるんですが、たとえば何らかの機器の異常について考えてみますと、「異常」というのは異常が出て初めて気づくものですよね。だけど、結果的に患者さんの身体に影響が出たらすごく大変じゃないですか。だから、まずは異常が起こらないように、これでもかというくらいアンテナを張って、未然にそれを防いでいるんですよ。これが、彼の言う「メンテナンス」の言葉の中に含まれるんですけれど、それぐらい、日々、生きてる間中アンテナを張り巡らせている状態で、仕事しつづけていつのは本当に大変なんじゃないかなとおもいます。
内:・・・過大評価されている気も若干しますが・・・私が働き始めたとき、当法人の臨床工学技士は3人でした。現在は27人にまで増えています。臨床工学技士が血液浄化業務において必要な職種であること、また、今現在まで働いてくれていたCEの皆さんの働きが認められたからこその形だと思っています。

陶:H.Nメディックの患者さんと職員の数の規模からいって、臨床工学技士さん27人というのは比較的多いという話もありますね。
内:そうですね・・・多いほうだと思います。
陶:私としては、それだけ、部としての力を発揮してもらえてるのかなと思えて嬉しくもあります。
山:これだけ重大なお役目ですから、従事するのも相当大変だと思いますが、人数がこうやって増えているというのはすばらしいことですよね。内海さんとしては、臨床工学技士の未来にはどのような展望があると思われますか?
内:今では、お子さんを育てながら働いてくれている仲間も増えています。今後も、臨床工学技士が患者さんのために何ができるのか、何をするべきなのかを考えながら、スタッフのみなさんと頑張っていきたいと思っております。

陶:私がすごく嬉しいと思っていることをひとつ共有しますね。バスキュラーアクセスという、患者さんの血管を透析ができるように仕立てる治療の分野があるんですね。具体的には自分の血管で作製するシャントのほか、人工血管や、カテーテルだったりというようなものを扱う仕事です。じつは当院ではそこにも、臨床工学技士さんが関わってくれているんですが、彼らの何がすごいかというとバスキュラーアクセスを「理解する」んですよ。患者さんの身体の中で走っている血管について、何をどうしたら透析にとって良いのか、ということを考えてくれます。きっと「これが自分の仕事だ!」と当事者意識をもって関わってくれているから、場合によっては「ちょっと!先生来てください!診てください!」というような感じで引っ張られて診にいくこともあります。そして、当事者意識といえば、私の印象に残っているのが2018年の北海道胆振東部地震、ブラックアウトのときです。私が地震の直後、深夜でしたが、病院に駆けつけたら、私より先に臨床工学技士さんが1名、院内にすでに到着していました。内海さん、そういうときって、何を考えて、走って、どういうふうに動いているんですか?
内:最初は何も考えないです。「まず、行こう」、で、行って何をしたらいいのかを考えます。ただ、臨床工学技士として言えば、まず機器の損壊状況、配管がどうなっているのか、水が漏れてないか、機械は倒れてないのか、といったことはまず一回見ます。そして、そこからどのくらいで復旧できるのかを頭で考えながら、それが長引くなと思ったときにはじゃあ次患者さんたちをどうしていこうか、という話をもちろん先生たちと含めてしていく。そのなかで、もし、破損しているなど故障があれば、そこを復旧する班と、分かれる感じでやっていこうかなと、そういうことが頭にあるんじゃないかと思います。
陶:そうなんですよね。例えば何かが破損していたとしたら、きっと私は開口一番、「内海さん、これ、なおる?」と聞くとおもうんですね。
内:そうですね。
陶:非常事態であったとしても、透析が安全にできるかどうかを含めて、時には医師にNOという責任も背負いながら診療を一緒に考えていく大切なポジションです。
山:今日は、今まで知らなかった臨床工学技士の大切なお仕事を知ることができました!先週、今週と、H・N・メディックの臨床工学技士で医療技術部部長の内海芳淳さんにお話を伺いました。ありがとうございました。
内:ありがとうございました。
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